<東北の本棚>心が温まる聖夜の奇跡

レビュー

3
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クリスマスを探偵と

『クリスマスを探偵と』

著者
伊坂 幸太郎 [著]/マヌエーレ・フィオール [イラスト]
出版社
河出書房新社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784309026169
発売日
2017/10/26
価格
1,404円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

<東北の本棚>心が温まる聖夜の奇跡

[レビュアー] 河北新報

 仙台市在住の人気作家である著者が、大学1年の時に書いた短編小説を基にして、あらすじを組み立てた。
 著者にとっては初の絵本作品。巧妙な構成と示唆に富んだ会話、幻想的で叙情的な挿絵などが相まって、聖夜を巡る心温まる物語になっている。優しさに包まれた内容で、老若男女が親しめそう。大切な人にクリスマスプレゼントとして贈りたい一冊だ。
 ドイツが舞台となっている。探偵のカールはクリスマスイブに、ある男の浮気調査を依頼され、尾行する。その途中、カールは公園のベンチで謎めいた男と出会い、何げなく会話を交わすことになる。
 話題がクリスマスやサンタクロースの真偽について及ぶと、カールは仲たがいしている父親とのクリスマスの苦い思い出について語り、心の奥底の心情を吐露する。そんなカールに対し、謎の男は物事は解釈の仕方によって、さまざまな姿になるという「こじつけゲーム」を提案する。このゲームを始めると、物語は思わぬ方向に展開していく。
 人が幸せになれる可能性を探るアイデアが見事だ。読み進めていくうちに、さえないと思っていた生活が解釈の仕方で奇跡の連続のように思えてきて、読後感が心地よい。
 著者は1971年千葉県松戸市生まれ。東北大法学部卒。2000年に「オーデュボンの祈り」で、新潮ミステリー倶楽部賞を受賞してデビュー。04年に「アヒルと鴨のコインロッカー」で吉川英治文学新人賞、08年に「ゴールデンスランバー」で本屋大賞と山本周五郎賞を受賞している。
 絵を描いたフィオールさんは1975年イタリア生まれでフランス在住。2011年に「秒速5000km」でアングレーム国際漫画祭最優秀作品賞を受賞している。
 河出書房新社03(3404)1201=1404円。

河北新報
2017年12月24日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

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