『明治を駆けぬけた紀州人 山東直砥』中井けやき著
[レビュアー] 産経新聞社
坂本龍馬ら幕末の志士と交流を重ね、明治維新後は陸奥宗光の懐刀として神奈川県参事や実業家として活躍した紀州人、山東直砥(なおと)の生涯をたどる。直砥は山東昭子元参院副議長の曽祖父でもある。
紀州藩士の長男として生まれ、晩年にキリスト教徒となった人生は波乱に満ちている。蝦夷地開拓で意気投合した龍馬から愛用の鞄(かばん)を預かり、大阪、神戸の富豪を説いて資金を集めるよう指示され、龍馬を介して出会った陸奥が投獄されたときは房内に出向いて語り明かした。福沢諭吉や渋沢栄一らとの活気に満ちた交流など、丹念な取材に基づくエピソードが光る。(百年書房・1300円+税)