<東北の本棚>愛する人へ伝えたい心
[レビュアー] 河北新報
主人公のネズミに思いを託し、仙台市の難病の男性(故人)が妻に贈った童話を鶴岡市出身の人気絵本作家が絵本化した。愛する人を思う心が真っすぐに伝わってくる。
主人公の「ねずみくん」は、大好きな「ねずみちゃん」の誕生日に向けて、何か喜ぶことをしてあげたいと考える。しかし、「ねずみくん」は自分には何の取りえもお金もなくて、すてきなプレゼントは贈れないと途方に暮れてしまう。
そんな折、「ねずみくん」はさまざまな動物や人と出会い、自分の得意なことに気付く。そして、困難に直面しながらも、プレゼントを贈るために懸命に努力する。つちださんの柔らかいタッチの絵柄が、原作のぬくもりを際立たせている。
原作者の阿部恭嗣さんは新潟県長岡市生まれ。筋ジストロフィーを患い、小学6年で仙台市太白区の西多賀病院に入院。同区に身体障害者自立ホーム「仙台ありのまま舎」を設立する運動に尽力した。34歳の時、ボランティアの昭子さんと結婚。50歳ごろから唇の動きで操作する特殊なマウスを使い、パソコンでブログの執筆や童話の創作に励んだが、2008年7月に52歳で亡くなった。
原作は恭嗣さんが昭子さんに誕生日のお祝いとして贈った童話。17年1月に藤崎が福袋として企画した「世界にたったひとつの絵本」作りに昭子さんが応募したことがきっかけで、つちださんの目に留まった。
教育画劇03(3341)3400=1296円。