『仙台を探訪する55話―正宗さんは美男子でやさ男』
- 著者
- 小崎隆雄 [著]/石澤友隆 [著]
- 出版社
- 河北新報出版センター
- ISBN
- 9784873413808
- 発売日
- 2019/01/01
- 価格
- 1,650円(税込)
<東北の本棚>逸話集め、街の変貌紹介
[レビュアー] 河北新報
仙台藩の城下町として発展し、108万の人口を持つ仙台市。移動が激しく街の変遷を知らない住民が増えている。特に明治期以降を中心に、暮らしや風土、歴史遺産などについて逸話や秘話を集めた歴史エッセー集だ。
「仙台美人論」「X橋は見た」「戦乱の中で」「NHK『東北うたの本』」「広瀬川の岸辺」など7部構成。
太白区長町周辺は戦前、軍需工場の集積地だった。萱場製作所(現KYB)はオートジャイロと呼ばれる航空機を製造し、試験飛行を繰り返した。主翼がない代わりプロペラの回転翼が付き、飛行機とヘリコプターを一緒にしたような構造だった。「花壇の東北帝大ラグビー場から飛び立つのを見た」という市民の証言とともに2人乗りの機体の挿絵、製造会社社長の手記を紹介する。
「西公園には明治期、劇場や写真店などがありにぎわった」「広瀬川では洪水で何度も橋が流された一方、水泳教室や川遊びの場として親しまれた」「花壇地区には仙台藩主の屋敷があった。昭和初期には仙台市動物園が開設された」などの話を読むと、街の変貌に驚かされ面影を探して街歩きしたくなる。
著者は1934年仙台市生まれ。河北新報社記者や広報局長を務め退職。河北仙販の情報紙「ひまわりクラブ」に2014年以降連載した「歴史講座・仙台万華鏡」をまとめた。
読者からの情報提供や質問に基づいて現地を訪ね証言を集める誠実な姿勢が文面から伝わる。「県庁舎はなぜ解体されたのか」の項では市内の歴史的建造物が取り壊された経緯を振り返り、行政や議会の対応を批判。歴史を大切にするまちづくりを訴える。
画家の小崎隆雄さん、志賀一男さん、村上典夫さんが懐かしい仙台の情景を思い出させる挿絵を描いた。
河北新報出版センター022(214)3811=1620円。