ストレス社会でがんばる人へ。行動が習慣になれば、おのずから心は整う

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あらゆるストレスが消えていく50の神習慣

『あらゆるストレスが消えていく50の神習慣』

著者
矢作直樹 [著]
出版社
ワニブックス
ISBN
9784847098062
発売日
2019/05/24
価格
1,210円(税込)

ストレス社会でがんばる人へ。行動が習慣になれば、おのずから心は整う

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

あらゆるストレスが消えていく50の神習慣』(矢作直樹著、ワニブックス)の著者は東京大学名誉教授/医学博士であると同時に、これまで「心のありかた」に関する何冊かの本を送り出してきた人物。

これまでは、「すべてのことに感謝の気持ちを持つ」「中今(なかいま)を生きる」「お天道様に見守られていると感じる」など、自分自身の「心を変える」ことに重きを置いた考え方を伝えてきたのだそうです。

そしてそのことに関連し、19世紀の米国人哲学者であるウィリアム・ジェームズの「心が変われば行動が変わる。行動が変われば習慣が変わる。習慣が変われば人格が変わる。人格が変われば運命が変わる」ということばを引用してもいます。

しかし、今回この本では、これとは逆のアプローチをしようと思います。 「心を変えようと思わずに、まず行動する。行動を無心に繰り返すことによって、習慣化する。習慣になれば、後から心が整う」  つまり、ストレスフリーで生きる習慣の提案です。 (「はじめに」より)

そして、せっかく習慣の本を書くのなら、ストレス社会でがんばる若い人たちに向けたメッセージとしたいと考えたのだそうです。

そんな考え方をもとに50の提案をしている本書のなかから、「朝の習慣」に関するいくつかのトピックスを抜き出してみたいと思います。

朝、目が覚めたら、大きく一回深呼吸をする

医師として救急の現場で多くの患者と関わってきた著者は、当然ながら助かった人だけでなく、助からなかった人も多く見ています。

そして、そんな仕事を通じて残念に思ったことは、いま、多くの人が、生きていることを当たり前だと勘違いしているということなのだといいます。

人は百パーセントの確率で必ず死にます。 しかも、それがいつになるのか誰もわからないのです。 通勤中に事故に遭うかもしれません。 アルバイト中に災難に巻き込まれるかもしれません。

夜、寝ている間に心臓麻痺や脳卒中になるかもしれません。 ですから、今日、目が覚めたことは奇跡です。 (8ページより)

だからこそ、目が覚めたとき、まずゆっくりと深呼吸をするのだというのです。

しかも、一回だけ。そののち無意識のうちに吸って吐いてを繰り返すことになるので、最初の一回くらいは意識的に大きく吸って吐いてみるのだとか。

立たないと深呼吸にくいというのであれば、それもよし。冬は寒いから布団から出たくないというのであれば、寝たままでもOK。

いずれにしても大切なのは、一日一回でもいいので、意識的に呼吸をしてみることだといいます。

人は寝ている間も休むことなく、1日2万回ほど呼吸しています。それが当たり前だからこそ、朝に目覚めたら大きく一回、深呼吸をしてみるべきだと著者。

その際、「あっ、息が吸える」と感動できるようになったら、それは自然と自分の身体に感謝し初めている証なのだといいます。(6ページより)

自分に合った簡単な体操を続ける

長時間にわたって椅子に座る仕事をしている人は、多かれ少なかれ、肩や首、腰の痛みに悩まされているかもしれません。

あるとき、私はネットで「キャット&ドッグ」と言う体操を知りました。 四つん這いになって、猫のように背中を丸める。次に、犬のように背中を反る。このときに頭も背骨の動きに連動させて、猫のポーズのときは顎を引き、犬のポーズのときは顎を上げます。

この体操は簡単なので、気に入り、毎朝するようになりました。そのとき、腰にエネルギーが入るイメージをします。 すると、体操の後、腰痛を感じにくくなったのです。 (15ページより)

仰向けに寝ているときは腰に負担がかかるため、朝、起きたときに重さを感じることはいまでもあるのだといいます。

しかし、この体操をすれば、起き抜けに感じた重さもなくなっていくというのです。もちろん個人差はあるでしょうが、試す価値はあるかもしれません。

その結果、「どうも合わない」と感じたのであれば、しっくりくる体操をしてみればいいだけのこと。大切なのは、「どの体操をするか」ではなく、「体操を続ける」ことだというわけです。

大切なのは、自分がしっくりくるお気に入りの体操を見つけること。そして、自分の身体との対話を楽しむことだと著者は記しています。(14ページより)

スマホを枕元に置かない

「離れることができない」など、スマホの弊害は多くの人が指摘しているところ。そこで著者は、「どうしたらスマホ中毒から解放されるか」について考えています。

まず提案しているのは、スマホを目覚まし時計代わりにするのをやめてみること。おそらく多くの人が、ベッドに入ってからもスマホの画面を見つめ、眠りに入るときも枕元にスマホを置き、充電をしているはず。

目覚まし時計としても使うとしたら、朝起きて最初に触るものさえスマホになるわけです。

そこで、寝室ではない離れたところに置いてみてはどうかというのです。

見えるところにあるから触ってしまうわけなので、玄関や洗面所などに置いてみるといいという考え方。物理的に遠ざけることは、効果的な対処法だといいます。

そして、朝のルーティンワークがすべて終わったら、初めて手に取るのです。 これで、一つ習慣が変わります。(31ページより)

通勤電車のなかでも、最近は新聞や本を読む人をあまり見なくなりました。

学生もサラリーマンも高齢者も、みんなスマホを操作しているわけです。もちろんメールチェックや調べものなど、仕事で使っている人もいることでしょう。

しかし、そういう場合も、使い終わったら「仕事は終わり」と心のなかでつぶやいて、区切りをつけることが大切。だらだらとネットやSNSなどに流れないようにすべきだということです。

同じように、せっかくの休日なのに、スマホをいじって時間を費やしてしまうというのも考えもの。

「きょうはこの動画を見よう」とか「ネットで買い物をしよう」など、目的がはっきりしていれば問題はないものの、だらだらと続けてしまうのであれば話は違ってきます。

そんなときも、電車内と同じように、「はい、終わり」と心のなかでつぶやいてやめるべきだというのです。

大手キャリアが通信障害を起こしたとしたら、多くの人が日常生活に支障をきたすことになります。ましてや、いつ大災害が来るかもわかりません。

だからこそ、「毎月第一日曜日はスマホ禁止の日」などと定めて、通信障害に備えるシミュレーションをするのもいいかもしれないと著者は主張しています。(30ページより)

書かれていることは、どれも難しくはなく「当たり前」のことばかり。だからこそ、忘れかけていた大切なことを再認識できるでしょう。

目次も章立てもなく、しかも押しつけをすることもなく、淡々とメッセージを投げかけてくれる一冊。

必ずしも最初から順番に読み進める必要はなく、なんとなく開いたページに書かれていることを、一日ひとつずつ実行するだけでもかまわないと著者は記しています。

気負う必要がないだけに、肩の力を抜いて参考にしたいところです。

Photo: 印南敦史

Source: ワニブックス

メディアジーン lifehacker
2019年6月6日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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