「非認知能力」教育が日本の未来を変える メルカリ小泉社長+ボーク重子対談(前編)

対談・鼎談

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「非認知能力」の育て方

『「非認知能力」の育て方』

著者
ボーク 重子 [著]
出版社
小学館
ジャンル
社会科学/教育
ISBN
9784093886338
発売日
2018/10/26
価格
1,650円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

「非認知能力」教育が日本の未来を変える メルカリ小泉社長+ボーク重子対談(前編)

[文] 小学館


メルカリ・小泉文明社長とボーク重子さん

 6月下旬都内で、「全米最優秀女子高生の母」としてテレビ出演なども多いボーク重子さんと、メルカリ・小泉文明社長が「令和時代の子育て」をテーマに対談、勉強会を催した。その内容をダイジェストにして、2回に分けてお伝えする。

 ***

小泉社長(以下、小):メルカリでは、男性社員の育休取得率は80%以上なんですよ。うちの会社の考え方として、人生を歩む上で何かあったときには、会社が支えます、というものがあります。育休のみならず、妊活や介護に関しても、徹底的にサポートします。僕自身、第二子と第三子、それぞれ2ヶ月育休をとりました。

ボーク重子(以下、ボ):すばらしいですね。メルカリさんの場合、トップがこうだから、社員のかたも育休を取りやすいのでしょうね。でも、まだまだ普通の日本企業では珍しいのではないでしょうか。

小:そうですね。搾取構造というか、経営側がそうした考えから抜け切らないのだと思います。結局個人を尊重する会社が勝ち残り、社員をないがしろにする会社は優秀な人材が得られず滅んでいくと思っています。

ボ:男性が育休を取ることのメリットはなんだと思いますか?

小:僕の場合ですが、プライベート面と仕事面とあって、プライベート面ではもちろん、出産という素晴らしい体験を共有できること、そして奥さんとじっくり話す機会ができること。
 仕事面で言うと、休むタイミングで社員に多くの権限委譲ができます。育休を睨んだスケジュール作りをして淡々と部下を登用していき、自分の仕事の棚卸しをしていきます。それは確実に自分のためにもなり、社員をやる気にして育てることにもつながります。

ボ:まさに「非認知能力」を育む会社なのですね。私はこれまで子育てに関する書籍を何冊か出しているのですが、問題解決能力や回復力、想像力やコミュニケーション力など総合的な人間力である「非認知能力」教育について書かせていただいています。でも、「非認知能力」は子どもだけに必要なものではなく、大人にも重要なものなのです。
 企業でも、数字で表すことができる「認知能力」ではなく、人間力=「非認知能力」を育むことで、社員はより幸せ感やパッションを持ち、それが成果につながるのではないかと思います。権限委譲は、企業トップができる最高の「非認知能力教育」ではないでしょうか。

小:同感です。非認知能力教育といえば、うちは子どもにも可能な限り何でも機会を与えようと思っていて、インターナショナルスクールで英語でやっているんですが、それに加えて中国語とフランス語を始めさせました。あとは、バレエと体操と、バイオリンにピアノ……。3歳半の娘ですが。

ボ:すごいですね! うちの娘も3歳から、バレエ、水泳、乗馬、スキー、スケートと結構な数のものをトライさせました。親の押し付けではなく、本人がやりたいと思うものはどんどん機会を与えて、「やめてもいいけど、やると言ったものは、3ヶ月は続けてみようね」というような約束をしました。

小:うちも同様です。そのうち本人が選択しますから、それまでは可能な限りの機会を与えるのが親の役目だと思います。与え続けていたら、何か大きなパッションを見つけるかもしれないですし。

ボ:非認知能力を育むのに大事な柱は2つ。1つは「子どもが安心してさまざまなチャレンジができる安全な環境」。その環境とは、子どもが「自分はそこにいていいんだ」と思えること、「楽しい」と思えること、個性が尊重されるような状態であることです。2つ目は、自分も子どももありのまま受け入れるということ。自己肯定感・幸福感は「伝染」しますから、親自身が自分を受け入れられなければ、子どもの自己肯定感を育むことはできないのです。

小:自己肯定感について言うと、僕自身両親の深い愛情で育てられて、一度も否定されたことがありません。

ボ:そこが鍵ですね!

(以下、後編に続く)

小泉文明(こいずみ・ふみあき)
株式会社メルカリ取締役社長兼COO。早稲田大学商学部卒業後、大和証券SMBCにてミクシィやDeNAなどのネット企業のIPOを担当。2007年よりミクシィにジョインし、取締役執行役員CFOとしてコーポレート部門全体を統轄する。2012年に退任後はいくつかのスタートアップを支援し、2013年12月に株式会社メルカリに参画、17年4月から現職。

ボーク重子(ぼーく・しげこ)
ICF認定ライフコーチ。米・ワシントンDC在住。2004年、アジア現代アートギャラリーをオープン、2006年、ワシントニアン誌上でオバマ前大統領(当時は上院議員)と共に「ワシントンの美しい25人」のひとりに選ばれる。2017年、一人娘・スカイが「全米最優秀女子高生コンクール」で優勝。日米で講演・執筆活動中。

小学館
2019年7月11日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

小学館

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