30万部ベストセラー「カササギ殺人事件」翌年発表の傑作

レビュー

3
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メインテーマは殺人

『メインテーマは殺人』

著者
アンソニー・ホロヴィッツ [著]/山田 蘭 [訳]
出版社
東京創元社
ジャンル
文学/外国文学小説
ISBN
9784488265090
発売日
2019/09/28
価格
1,210円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

作家自身が“ワトソン役”に!? 『カササギ殺人事件』に並ぶ傑作

[レビュアー] 香山二三郎(コラムニスト)

 昨年の年間ベストテンで七冠を達成、三〇万部のベストセラーとなった『カササギ殺人事件』。本書はその著者が『カササギ』の翌二〇一七年に発表した別シリーズの第一作である。ホロヴィッツはイギリスではヤングアダルト・ミステリーの第一人者として知られ、人気ドラマ『バーナビー警部』や『刑事フォイル』の脚本家としても名高い。だが一躍名を広めたとはいえ、日本で有名になるのはこれからだろう。

 本書でシャーロック・ホームズ役を務めるロンドン警視庁の顧問で元刑事のダニエル・ホーソーンは架空のキャラだが、相棒のワトソン役は何とホロヴィッツ自身。彼のことをこれから知りたいという人は本書のほうからひもとかれるといいかも。

 物語は資産家の老婦人が葬儀社を訪れ、自らの葬儀を申し込むところから始まる。その数時間後、彼女は自宅で絞殺される。その頃初の大人向け長篇『シャーロック・ホームズ絹の家』を書き終えていた「わたし」ことホロヴィッツは、ドラマの脚本執筆の協力者だったホーソーンから連絡を受け、その老婦人殺しを捜査する自分の姿を描いてほしいと依頼される。一度は断るものの、ある文学祭で女性読者に現実味がないと自作を酷評され、依頼を受けることに。犯行現場を訪れた「わたし」は、ホーソーンから被害者が一〇年前に幼い兄弟を轢き逃げする事故を起こしていたと知らされるが……。

 かくしてホーソーンたちは過去の事件関係者にも聞き込みを進めていくものの、自分の手の内をなかなか明かさないホーソーンに「わたし」は苛立ち気味。事件の輪郭がなかなかつかめない不満もあって何かとぶつかり合いそうになる探偵コンビだが、著者の作家像が随所でリアルに浮き彫りにされていて誠に興味深い。アガサ・クリスティ仕込みのフェアな謎解き趣向は切れ味もよく、今年もベストテン上位につけるであろうことは疑いなし。

新潮社 週刊新潮
10月17日菊見月増大号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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