『片づけの基本』
- 著者
- 渡部亜矢 [著]
- 出版社
- ディスカヴァー・トゥエンティワン
- ISBN
- 9784799325698
- 発売日
- 2019/11/28
- 価格
- 1,430円(税込)
できなくて自己嫌悪…を回避。苦手な人でも無理なく続く片づけ術
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
『全部スッキリ 片づけの基本』(渡部亜矢 著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者は、「実家片づけアドバイザー」。
聞き慣れない職種ですが、片づけられない人に向け、リバウンドしない片づけ術、出張片づけサービス、実家片づけアドバイザー認定講座などを展開しているのだそうです。
そしてそんな立場から、本書の冒頭であることを指摘しています。
一般的に紹介されている細かい収納テクニックの数々は、たいてい片づけが得意な人が紹介しているものです。自分に合うものだけをピックアップして実行できればよいのですが、片づけが苦手な人にとっては簡単ではありません。
かえって、「できない」ことを気に病んで、自己嫌悪に陥ってしまうのです。(「はじめに モノを片づけると 時間、人間関係、悩みも解決する」より)
そこで本書では、片づけが苦手な人に向け、「苦手でもできるコツ」を紹介しているというのです。
第4章「モノをスッキリさせる」のなかから、3つのポイントを抜き出してみることにしましょう。
服を減らすと自分の好みが見えてくる
現実問題として、自分の好みではない服をたくさん持っている人は少なくないはず。
著者によれば、あまり着ない服が増える背景には、他人の好みや流行に左右され、自分の選択基準が持てていないことがあるのだそう。
もちろん、自分の好みに自信を持つことは簡単ではないかもしれません。とはいえ本来、好みに正解・不正解はないはず。
そこで、もしも自分の好みがわからないのであれば、洋服の数を減らすべきだというのです。
なぜならそうすれば、自分の好みが見えてくるから。その結果、自分に自信が持てるという好循環が生まれるわけです。
洋服の数を減らす目安は「クローゼットに入れるだけ」で、さらに肩幅程度の空きができれば大成功。
クローゼットに入らない服を部屋のパイプハンガーにかけているなら、まずパイプハンガーを捨てること。そしてもうひとつ、興味深いことを著者は指摘しています。
片づけが苦手な人は衣替えを避けるべきです。クローゼットに1年分の服を納めるのです。ジャケット、シャツ(ブラウス)、パンツ(スカート)、靴の4つがそれぞれ4つずつあれば、それだけで計算上256通りの組み合わせができます。
つまり週5日勤務なら、1年分の着回しができるのです。意外と服の数は必要ないことがわかるでしょう。(131ページより)
服は、次の5つに分けられるといいます。
・着る服(日常的に必要な服)
・よそ行きの服(高級な服など。普段づかいにするか、処分する。冠婚葬祭用は「洋服」ではなく「衣装」として段ボールに入れ、押入れの奥に保存)
・思い出の服(発表会で着た服など。処分できないなら、段ボールに入れ、押入れの奥に保存)
・着られる服(着られるが、気に入っていないので着ない服。処分の対象)
・着ない服(破れていたり、シミがついている服、痩せたら着ようと思っている服など。処分の対象。
(133ページより)
残すのは「着る服」のみ。「思い出の服」「よそ行きの服」が必要になるのは年に1~2度なので、クローゼットに収納しておく必要はなし。
通気のよい収納ケースに入れ、押入れの奥に保管しておけば充分だというわけです。
ちなみに引き出しは奥のほうが見えないため、片づけが苦手な人は手前半分に畳まず収納すると便利。
また、お気に入りのハンガーを買い、洋服の数を決めておくと、それ以上増えずにすむといいます。(130ページより)
本の仕分けは「読みたい」順で
本は情報であり、愛着がある場合も少なくないため、他のモノと違って捨てにくくもあります。
そこで本好きの人は、「読みたい本」「読まなければいけない本」「思い出の本」に分けるとよいそうです。
「読みたい本」は、自分の気持ちに忠実に、さらに読みたい順に並べると、自分だけのオリジナル本棚が完成。「読まなければいけない本」は仕事などで必要な本なので、読みや本と分けると頭のなかがスッキリ。
そして「思い出の本」は、付箋が貼ってあったり、アンダーラインがたくさん引いてある参考書など。そうそう読み返すことはないでしょうが、取っておきたいこともあるはず。
その場合は「思い出コーナー」に移せば、いま読みたい本がクリアになるといいます。
本好きの人は、本が片づかないことよりも、本を読めないことにストレスを感じるもの。いわば本好きの人にとって、活字はご飯と一緒。
そこで「食べないと心身に影響を及ぼす」と考え、読む時間の確保を優先すべき。
映画好きの人が劇場や家でじっくりと時間をとって観るように、本好きの人も本を読むために充分なスケジュールをとり、電子ブックを持ち歩くなどの工夫をすることを著者は勧めています。(134ページより)
書類・紙モノは徹底的に減らす
書類・紙モノの筆頭である領収書については、いつまで保存しておけばいいのかが悩みどころ。しかし著者によれば、ガス・電気の保存期間の目安は2年、水道料金は5年なのだとか。
ガス・電気が水道料金より保存期間が短いのは、民営化されているから。
そして水道料金の5年というのは、水道料金が高いなどを理由で、水道局に申し立てる期限なのだそうです。
毎年誕生月に送られてくる、年金の記録が記載された「ねんきん定期便」は、いまあるものからでもいいので、すべて保存しておくことが重要。
超高齢化社会においては、今後どのような変革があるかわからないというのがその理由です。
パソコンやテレビ、冷蔵庫など、毎日よく使うものの取扱説明書は、買った当初はその家電のそばに保管し、使い慣れたら処分。
いまはメーカーのサイトにも取扱説明書が掲載されていることが多く、すぐに検索できるため、紙の取扱説明書は必要ないわけです。
スマホで撮った写真は、お気に入りだけをアルバムに移しておくといいそうです。基本的にはテーマごとよりも、日付の新しいもの順に並べる「時系列整理」が簡単。
また、データや紙焼きの写真をインターネットや宅配便で送ると、サッシのアルバムをつくってくれるサービスもあるので利用したいところ。
ご先祖様や、誰が写っているのかわからないものは、写真を写真に撮ったあとに処分したり、写真供養に出すという方法も。
このように、きちんととっておいたほうがいいものは意外と少ないもの。
心配なものは写真に撮ってデータとして残しておけばいいわけです。(138ページより)
「片付けは人生の目的ではない」と著者は断言しています。しかしモノの整理をすると、時間や人間関係も整理されるのも事実。
つまり片づけは多方面の悩みを解決し、人生にゆとりを生み出してくれるということ。
そのような観点から片づけを広い視野で捉えてみれば、日々の暮らしが変化するかもしれません。
Photo: 印南敦史
Source: ディスカヴァー・トゥエンティワン