『カラスは飼えるか』
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カラスだけでなく他の鳥の話にも引き込まれる
[レビュアー] 東えりか(書評家・HONZ副代表)
「鳥本にハズレなし」というのが私の持論である。鳥の生態が興味深いのは確かだが、それ以上に鳥類学者にはユニークな人が多い。
『鳥類学者 無謀にも恐竜を語る』(新潮文庫)の川上和人、『ダチョウの卵で、人類を救います』(小学館)の塚本康浩など真摯な研究者が真面目に書いた本ほど面白い。
本書の著者はカラス研究者。『カラスの教科書』(雷鳥社、のちに講談社文庫)の単行本が上梓された時には、まず厚さに驚愕し、一読して、そのカラス愛の熱さにクラクラした。いつの間にか、カラスは可愛いかも、と思えるようになるから不思議だ。
都市部ではどこでも見かけ、ゴミを散らかして嫌われるカラスだが、本当に嫌な奴なんだろうか? 飼ったら可愛いんじゃないか? 食べたら美味しいんじゃないか? そんな疑問に本書でも丁寧に答えてくれる。ただし、そんなことを真剣に考える人は少ないと思うけれど。
カラスが好きで研究している著者は、当然のように他の鳥も好きだ。鷹やフクロウは言うに及ばず、絶滅してしまったドードーや日本では一部でしか見られないカササギ、世界中で食用に供されるニワトリの秘密まで明かしてくれる。渡り鳥のメカニズムや台風の後に見られる迷鳥の話など、ぐいぐいと引き込まれる。
カラスは賢いと思っている人が多いだろうが、実は全部がそうでもないというのも初めて知った。街なかで見られるカラスはハシブトカラスとハシボソカラスの二種類で、車に木の実を轢かせて食べるような器用なやつはハシボソなのだそうだ。
攻撃されるといっても、子どもを守る時だけ、後ろから頭を蹴飛ばすくらいというが、私は小学生の時に頭をつつかれてヘヤピンを持っていかれた経験がある。あれは何だったのか。
カーラースなぜ鳴くの、カラスの勝手でしょー、と歌った志村けんの訃報を聞いた日に本書が目に留まった。何かの暗示なのだろうか。