ジェンダーフリーと逆行する国土交通省 女性ドライバーを「トラガール」と命名する感覚に疑問

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トラックドライバーにも言わせて

『トラックドライバーにも言わせて』

著者
橋本 愛喜 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
産業/交通・通信
ISBN
9784106108549
発売日
2020/03/14
価格
836円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

【独自取材】『トラックドライバーにも言わせて』著者・橋本愛喜氏インタビュー(後編)「女性の活躍促進は大歓迎、でも『トラガール』は間違い!」

[文] 藤原秀行(ロジビズ・オンライン編集長)


笑顔でメッセージを伝える橋本氏

ドライバー同士がつながり合えばマナー違反解消

――先ほどマナーの悪いドライバーについて言及されました。もちろんそうしたドライバーが全てということは絶対にありませんが、本書でも触れていたように、車中でペットボトルの中に用を足して、そのまま車外に投げ捨てるような、本当に悪質な人間もいて、ドライバーという仕事のイメージを悪くしている。まさに自分で自分の首を絞めているのも事実です。そんな状況についてはどう思いますか。

「私のツイッターのフォロワーになっているトラックドライバーは全体的に、正義感がすごく強いんです。運転している時に何ができるかというと、大まかに言えば飲食するか考えるかの2つしかないので、すごく考える人が多い。だからこそ自分なりの正義感を強く持たれている。以前、ある運送会社の経営者さんに、やめるよう橋本さんからもSNSなどで呼び掛けてほしいと言われたのが、ドライバーが運転中にごみのポイ捨てなどのマナー違反をした別のドライバーをスマートフォンで撮影してSNSにアップすることです。正義が正義をつぶしているようなイメージで、本末転倒になっているとその経営者さんはおっしゃったんです」

「マナーが悪いトラックドライバーさんに対し、一番むかつくと思っている人たちは、実は同じトラックドライバーさんたちなんです。自分たちの地位を下げることにつながるから。ドライバーはそれぞれ自分の会社の看板を背負って走っているわけですしね。そういうことを考えると、本当はドライバーさんがマナーの悪いドライバーさんに声を掛けていくのが一番良いと思います。私もマナー違反の現場写真をSNSにアップするのではなく、それこそ飲み会の場などを利用して、友情とドライバー同士のつながりの強さを通じて、お互いを良い意味で監視し合うのがいいんじゃないでしょうか」

「おそらく、そういう(用を足した後の中身が入っている)“黄色いペットボトル”を作ってしまう人たちって、どうせ誰も見ていないし、俺なんてトラックドライバーしかできないし、みたいなふうに思ってしまっている、本当に本当の孤独なドライバーさんが多いはずです。みんなお互いに強くつながっていて、そういうことはやめようと言う人が本当に多いのに、そこから違う道に行ってしまう人には、声を掛けるなどしてつながりを持たせるのがすごく即効性のある解決方法じゃないかと考えています」

「私自身も昔は結構やんちゃだったので(笑)、ドライバーをしている時は高速道路のサービスエリアやパーキングエリアで結構、他のドライバーがごみをポイ捨てしているのを注意したこともありました。それで相手が怒ったら、何かを褒めてあげるというか、キャッチアップしてあげて、つながりを持ってあげれば、その人は今後たぶんマナーを守るようになると思います。互いに監視し合い、励まし合うというのはすごく大事なことなんじゃないでしょうか」

――最後に、トラックドライバーの皆さんとそれ以外の読者の皆さんにあらためてメッセージをお願いします。

「ドライバーさんは、今いろいろ本当に大変な状況だと思います。特に(1990年のいわゆる“物流2法”施行による)規制緩和があってから、自分たちの首を絞めるだけ絞められている状況になっています。誇りを持って仕事に取り組んでほしい、と強く思います。しんどくても、いい意味で俺たちがいなきゃ日本の経済は回らないだろう、みたいな、間違わない方向でプライドを持ってほしい。そして本当に、どうぞご安全に!と申し上げたいですね」

「特に日本は、著名人の不倫の問題などを見ていても、行き過ぎた正義がすごく強くなってしまっているように思えます。それではすごく堅苦しくて余裕のない生活になってしまう。本書でも紹介しましたが、どうしようもない事情で仕方なくノロノロ運転で追い越し車線を走っているトラックドライバーに対して、そんな速度で走るなと普通車のドライバーが怒っている。もちろん法律やルールに違反するのはいけないことですし、普通車のドライバーがお怒りになる気持ちもよく分かりますが、その法律やルールが現実の社会に追い付いておらず、やむなくドライバーたちがそうしているんだということを理解しようとする気持ちはぜひ持っていただきたいと思います」

(了)

ロジビズ・オンライン
2020年5月1日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

ライノス・パブリケーションズ

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