『奇跡の住宅 旧渡辺甚吉邸と室内装飾』内田青蔵他著
[レビュアー] 産経新聞社
昭和初期の住宅建築の傑作、旧渡辺甚吉邸は東京・白金台にあった。優れた近代建築が姿を消していく中、岐阜の名家・渡辺家の私邸だったこの建物は、研究者らの尽力あって、移築復元への道筋を付けた上で昨年、解体を終えた。
チューダー様式と呼ばれる中世英国風の外観は簡素だが、内部は部屋ごとに意匠が異なり、華やかで凝っている。考現学の提唱者で知られる今和次郎(1888~1973年)が照明など室内装飾のデザインを担当、数少ない今の実作として貴重だ。本書には、住宅づくりに情熱を傾けた人々と保存へ奔走した人々の物語が詰まっている。(LIXIL出版・1800円+税)