過去を振り返るとポジティブになれる「回想脳」を高める習慣

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回想脳 脳が健康でいられる大切な習慣

『回想脳 脳が健康でいられる大切な習慣』

著者
瀧 靖之 [著]
出版社
青春出版社
ジャンル
自然科学/医学・歯学・薬学
ISBN
9784413231985
発売日
2021/03/16
価格
1,540円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

過去を振り返るとポジティブになれる「回想脳」を高める習慣

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

回想脳 脳が健康でいられる大切な習慣』(瀧 靖之 著、青春出版社)の著者は、多くの脳画像をデータベースとして構築し、それらの人々の生活習慣や考え方などを調査、研究し続けてきたという医師。

自身も日常生活のなかで「脳にいい」といわれるさまざまなことを実践したきたといいますが、そのひとつが「過去を積極的に振り返ること」。

一般的には、未来に向かって行動することこそがポジティブで、過去を振り返ることはネガティブであると捉えられがちです。

しかし多くの脳科学の研究によって、過去を振り返ることで、むしろポジティブな気持ちになれることがわかったというのです。

先行きの不透明な今、未来のことを考えようとしても、かえって不安になるばかりで、足がすくんでしまうかもしれません。しかし、過去を積極的に振り返ることで、自分のなかから幸福感が湧いてくるとともに、前に向かって進んでいこうと思えるようになる。

そのような回想の素晴らしい力を、今こそ多くの方に知っていただきたいと思い、私はこの本を書こうと思い立ちました。そして、回想によって健康な脳になることを「回想脳」と名づけました。(「はじめに」より)

多くの脳医学研究を通じて明らかになったのは、いくつになっても脳が健康な「生涯健康脳」の人には、「知的好奇心」「運動」「コミュニケーション」という共通点があるということ。そこで本書では、それら3つの要素と階層を組み合わせる方法を「回想脳ワーク」と呼んでいます。

そんな本書の5章「『回想脳』が生きる力を引き出す」のなかから、2つのポイントをご紹介したいと思います。

「いま」もやがては「過去」になる

当然のことながら、「いま」もいずれは「昔」になります。現在、自分が経験していることは、やがて過去の思い出のひとつになっていくのです。

だとすれば、将来になって「現在」を思い出したとき、きちんと印象に残っているかどうかは「いま」をどう生きているかにかかっていることになります。現在をしっかり生きていれば、将来になって振り返ったとき、懐かしい思い出として記憶が脳に蘇るわけなのですから。

しかも、未来の自分が過去を懐かしがることで脳が活性化すれば、それは認知症になるリスクを下げることにもなり、高齢者になってもいきいきと楽しく過ごせるのだそうです。

それには、現在において、「これは未来の自分にとって、懐かしく思い出すだろうなあ」と感じるに違いないことをするのが大切です。

いわば「先取りノスタルジア」として、ノスタルジアを感じるであろう行動を、先取りして行おうというわけです。(154ページより)

「先取りノスタルジア」をつくるためには、ただ漫然と時間を過ごすのではなく、知的好奇心を持ちつつ、一瞬一瞬を楽しみながら大事に生きることが大切。そして、それが自分の人生にとってどのような意味を持つかを考えることが重要なポイント。

いいかえれば「先取りノスタルジア」は、未来の自分が幸福に生きるための先行投資。現在を楽しんで生きることが、幸福をもたらす貯金になるということです。(154ページより)

未来の自分のために日記をつける

「先取りノスタルジア」の一環として著者が勧めていることのひとつが、日記をつける習慣。日記をつけ、折に触れてそれを読み返すことで「回想脳」がつくられ、それが未来へと向かう力を引き出してくれるというのです。

日記と聞くと「三日坊主で終わってしまった経験がある」「だんだん面倒になる」というように、ネガティブな反応をする方が多いかもしれません。しかし、別にしっかりとした文章を残す必要はないのだとか。ちょっとした日々のメモを手帳に残すだけでOKなのです。

「午後4時から銀座の喫茶店に行って、○○さんと会った」

「午前10時ごろから2時間ほど、金沢の繁華街を散歩した」

こんな程度のことだけでも書いてあれば、何年かのちにそれを見たときに、思い出すヒントになります」(156ページより)

逆に分厚い日記帳を買ってきて、「さあ、はじめるぞ!」と意気込んでしまったりすると、どうしても途中で息切れしてしまうもの。しかし手帳にメモをする程度であれば、気軽に始めることができ、続けることも難しくないわけです。

実際、何年も前の私の手帳を見ると、ああこんな仕事をやっていたんだ、こんなところに出かけていたのかと、懐かしく感じます。

ときには、名前を見ても思い出せない人が出てきますが、そんなときに賢明になって思い出そうとするのも脳の活性化に役立ちます。(156ページより)

また、もしも余裕があるなら、そのときに印象に残ったことをメモすることも効果的であるようです。

「東京では久しぶりの大雪。交通機関がストップした」

「新幹線から見た富士山に、きれいな笠雲がかかっていた」

「○○さんはおとなしい人だと思っていたけれど、今日会ってみておもしろい人だとわかった」

(156〜157ページより)

このように具体的なことが書いてあれば、何年か経って見返したときに、そのときどきの場面が蘇ってくるというわけです。

ちなみにGoogleカレンダーのようなデジタルツールに記録を残している方もいらっしゃるでしょうが、Googleカレンダーの場合、データが残る期間に限りがあるのが難点だと著者。何年かすると入力が消えてしまうため、そういう意味でもアナログの手帳がおすすめだそうです。(155ページより)

著者は本書を、認知症が気になるような高齢者だけではなく、むしろ働き盛りの方々、若い方々に読んでほしいという思いがあるのだそうです。

つまり過去を振り返ることは、いままさに最前線にいる方々にとってこそ重要だということ。だからこそ、ここに書かれていることを参考にしつつ、そして実践し、「前向きに過去を振り返って」みてはいかがでしょうか?

Source: 青春出版社

メディアジーン lifehacker
2021年3月30日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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