『芸術のよろこび』吉田秀和著
[レビュアー] 産経新聞社
わが国の音楽批評をリードし、9年前に98歳で亡くなった吉田秀和の対談集。昭和27年から平成21年に行われた13本を収める。相手は福田恆存(つねあり)、亀井勝一郎、加藤周一、大岡昇平、浅利慶太、竹西寛子ら。話題は音楽にとどまらず、絵画や文学など芸術全般に及ぶ。
古今東西にわたる深い教養と鋭敏な感性を武器に西洋文明とスマートに向き合う吉田は、その文章と同様にリズム感のある心地よい語り口で、芸術創造の秘密や東西文明の差異について卓見を述べてゆく。『源氏物語』を生まれてから3回しか読んだことがないといった発言にも驚かされる。(河出書房新社・2695円)