食べものから学ぶ世界史 人も自然も壊さない経済とは? 平賀緑著

レビュー

7
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食べものから学ぶ世界史

『食べものから学ぶ世界史』

著者
平賀 緑 [著]
出版社
岩波書店
ジャンル
社会科学/経済・財政・統計
ISBN
9784005009374
発売日
2021/07/26
価格
902円(税込)

書籍情報:openBD

食べものから学ぶ世界史 人も自然も壊さない経済とは? 平賀緑著

[レビュアー] 内山節(哲学者)

◆資本主義の支配明らかに

 資本主義とはどのようなものなのか。資本主義とともに展開してきた近・現代史は、この世界をどのように変えたのか。この問いに、食べ物の歴史を通して答えたのが本書である。

 日本の歴史をみても、明治以降私たちの食生活は大きく変わっていった。それぞれの地域がつくっていた特色のある食文化は後退し、米中心の食生活が広がるようになった。さらにパンやパスタ、肉類や乳製品などを食べる日常が生まれ、外食や総菜の購入などもふえていった。

 この変化の奥には、資本主義の発展があったのである。本書は、そのことを世界史のなかで考察していく。

 産業革命以降の世界は、なぜパンのような粉食と砂糖の大量摂取をもたらしたのか。資本主義の展開とともに、なぜ世界の食生活は共通化していったのか。なぜ加工品や総菜、大量消費が生まれていったのか。一方で肥満による生活習慣病や大量の廃棄食品が発生し、他方で飢餓に苦しむ人々がふえるという構造は、なぜ生まれているのか。その背後には、食べ物の世界を支配していく企業の暗躍があった。

 資本主義は自ら商品を生産するだけでなく、それまであったさまざまなものを商品に変えていく。食べ物もそのひとつである。必要なものを自分たちでつくっていた食べ物が、農家は作物という商品を生産し、消費者はその商品を購入するかたちに変わった。そして商品の生産と流通が浸透すれば、この過程を支配し、利益を上げようとする企業が暗躍するようになる。気づかないうちに、私たちは資本主義のメカニズムのなかにのみ込まれていく。

 もっとも著者が「おわりに」で述べているように、消費者からも農民からも、この資本主義の展開に抗する動きもでている。生活のなかに農的なものを取り入れたり、農民と消費者を新しいかたちでつなごうとする試みは、いまでは世界のいたるところで発生している。資本主義の時代とは、資本主義に抵抗する人たちの時代でもあったのである。

(岩波ジュニア新書・902円)

京都橘大准教授。研究のかたわら市民活動にも参加。著書『植物油の政治経済学』。

◆もう1冊

内山節著『資本主義を乗りこえる』(農山漁村文化協会)。平明な講演録。

中日新聞 東京新聞
2021年9月5日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

中日新聞 東京新聞

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