『宇宙は数式でできている なぜ世界は物理法則に支配されているのか』
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読み物として楽しめる宇宙物理学の道案内
[レビュアー] 渡邊十絲子(詩人)
突然ですが宇宙に興味はありますか? この宇宙にはどれだけの星があるんだろうとか、宇宙の果てはどこらへんなのかとか……世俗を離れてそんなことを思う時間は悪くないものだ。ところがいつもネックになるのは数式である。入門書のたぐいであっても、かなり難しい式が堂々と書かれていて気持ちがくじける。数学に「わかった」感じを抱いたことのない人はとくにそうなりやすい。
この本ならだいじょうぶ、いけますよ。須藤靖『宇宙は数式でできている』。副題に「なぜ世界は物理法則に支配されているのか」とある。もともと純粋な思考の産物(人間の作ったもの)であるはずの数学が、宇宙のありさまをちゃんと表現できてしまうのはなぜか。著者は『人生一般ニ相対論』などの著書で、絶妙な笑いをまぶして宇宙物理学を解説してきた手だれだから、安心して道案内を任せてみてください。
数学が自然世界を理解するために不可欠なものならば、〈人間が知っているかどうかとは無関係に、自然界ではすでに採用されていたことになります〉。計算上はこうなるとされたブラックホールや重力波は、のちに実在することがわかった。数式は「発明」ではなく「発見」なのだ。
円周率というなじみのある数字を求めるためのさまざまな計算式(それぞれ全く違うアプローチ!)を紹介し、理解するのではなく雰囲気を眺めてもらうという導入がすばらしい。読み物として楽しんでほしい。