『なんでも見つかる夜に、こころだけが見つからない』
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『殺さない彼と死なない彼女』作者・世紀末が紹介 自分の心だけでなく他人の心のことも深く考えるキッカケに
[レビュアー] 世紀末(漫画家)
自分の心とどう向き合うか、他者とどうつながるか「夜の航海」をモチーフに描いた“新感覚の読むセラピー”『なんでも見つかる夜に、こころだけが見つからない』の売れ行きが好調だ。「自分の心だけでなく他人の心のことも深く考えるキッカケになる本でした」と語る世紀末さんが、読んで心に残ったシーンから想像を膨らませて執筆したマンガを公開。著者の東畑開人さんによるコメントつきで紹介する。
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<東畑開人コメント>
心にとって「前」はどちらの方角なのか。僕らはしばしばわからなくなります。方角さえわかれば、そっちに向かって舟を漕げばいいのだけど、それがわからないから動けなかったり、同じところをグルグルしたりしてしまう。そういった人生の方向喪失の時期を、深層心理学者ユングは「夜の航海」と呼びました。
<東畑開人コメント>
世紀末さんがこの場面を取り上げてくださったのは嬉しかったです。「ナイショのつながり」、つまり親密な関係がこの本のメインテーマなのですが、そこには自分でも気がつきにくい傷つきが溢れかえります。傷つけないように、傷つけたい、傷つけられる、傷ついた、あるいは癒される。ああ、親密になると、そういうことばかり。
<東畑開人コメント>
「普通」はふしぎな言葉です。なにが「普通」なのか、本当はよくわからないのだけど、「普通」と言うと、そこにあった色々な気持ちを麻痺させることができる。それはつまり、どんなに嫌なことであっても、それに慣れてしまって、当たり前だと思って、絶望している自分が「普通だよ」と言っているということなのでしょう。だから、誰かが「それはヒドイ」と言ってくれると、本当に助かる。