睡眠とは自己投資である。睡眠専門医が勧める午後の作業効率をぐーんとあげる習慣

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ぐっすり眠る習慣

『ぐっすり眠る習慣』

著者
白濱龍太郎 [著]
出版社
アスコム
ジャンル
芸術・生活/家事
ISBN
9784776212591
発売日
2023/02/01
価格
1,397円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

睡眠とは自己投資である。睡眠専門医が勧める午後の作業効率をぐーんとあげる習慣

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

「ぐっすり眠って心地よく目覚めたい」と願う方は少なくないでしょう。しかし、睡眠専門医である『ぐっすり眠る習慣』(白濱龍太郎 著、アスコム)の著者によれば、ぐっすり眠るということを定義するのは簡単ではないのだそうです。

人は眠っているあいだ、レム睡眠とノンレム睡眠という二種類の状態を繰り返しています。このうち、深い眠りであるノンレム睡眠には3段階あり、もっとも深い「深睡眠」と呼ばれる状態は、眠ってから4時間以内に現れることがほとんどです。

この深睡眠がしっかりとれており(理想は、一晩で2回程度)、かつレム睡眠とノンレム睡眠のバランスがいいことを、この本では「ぐっすり眠る」と表現します。(「はじめに」より)

そんな状態をつくることができれば、脳と心がきちんと回復し、パフォーマンスが上がることが証明されているのだとか。

つまり、ぐっすり眠ることと日中のパフォーマンスにはなんらかの関係がありそうだと考えられるわけです。とはいえ、いつでもぐっすり眠れるかといえば、そう簡単にはいかないものでもあります。

だからこそ、その前の準備が大切。ぐっすり眠るのにいい行動を知り、習慣づけてしまうのが早道なのだといいます。ただし習慣といっても難しいことではなく、本書で紹介されているのはすぐに実践できるものばかり。自分に合ったものを生活に取り入れていけば、誰でも必ずぐっすり眠れるようになるそうです。

眠っている時間は、「空白の時間」ではなく、日中のパフォーマンスを高めるためのメンテナンス時間。むしろ、「自分への投資の時間」としてとらえることで、日中の状態が見違えるほど変わります。(「はじめに」より)

こう主張する著者による本書のなかから、きょうは第5章「日中の眠気を上手にコントロールする方法」に注目してみたいと思います。

正しい昼寝で、脳は劇的に回復する

日中の集中力や能率アップに効果的なのが、15〜20分程度の短い昼寝。しかも意外なことに、コーヒーを飲んでからの昼寝がおすすめなのだとか。コーヒーのいい香りには、副交感神経を優位にして、気持ちをリラックスさせる効果があるからで、つまりは催眠作用が期待できるということのよう。寝不足であればなおさら、スッと眠りに落ちることができるのだといいます。

しかしコーヒーに含まれるカフェインには、交感神経を刺激して眠気をなくし、気分をスッキリさせる覚醒効果もあります。香りとは正反対の効果ですが、コーヒーの効能と聞いたときにこちらを思い浮かべる方のほうが多いかもしれません。

コーヒーの香りは嗅いだ瞬間からリラックス効果が出ますが、カフェインを摂取して覚醒効果が出るまでには、およそ20〜30分を要します。

つまりそこには、しばしのタイムラグが存在するのです。この時間を昼寝にあてることで、睡眠による休養効果とカフェインの覚醒効果のいいとこ取りができます。昼寝のあとはスッキリと頭が冴えて、仕事や勉強のパフォーマンス向上が実感できることでしょう。(149ページより)

ちなみに昼寝の時刻は午後1時がベストで、遅くとも午後3時までには済ませるようにしたほうがいいようです。それより遅い時間の昼寝だと、夜ぐっすり眠ることができなくなってしまうからです。

そして昼寝に関しては、20分以上は眠らないように注意することが必要。それ以上寝てしまうと、眠りが深くなって目覚めが悪くなるからです。カフェインが効きはじめるタイミングに合わせて起きるのが、短時間でもスッキリ目覚められる秘訣だということです。

日中の眠気覚ましに飲むコーヒーは、ホットとアイスでは効果に差があるそう。カフェインによる覚醒効果が早く出るのは、ホットコーヒーだそうです。なぜなら、カフェインの血中濃度が最大になるまでの時間はアイスコーヒーよりもホットコーヒーのほうが早いから。

ホットコーヒーのほうがカフェインの含有量が多く、また冷たい飲み物だと小腸の粘膜にある毛細血管の収縮や胃の運動の低下が起きるため吸収されにくいことがあるというのです。

ただし、眠気覚ましのコーヒーに頼りすぎるもの考えもの。カフェインはアデノシンという睡眠物質の働きをブロックすることで眠気を遠ざけるものの、それは一時的にせき止めているにすぎないからです。脳は変わらず動いている状態なので、脳のためには眠らなければいけないわけです。(148ページより)

午後の眠気対策のために、おすすめのランチは?

人間に、サーカディアンリズムと呼ばれる体内時計が備わっているというのは知られた話かもしれません。一方で注目すべきは、それとは別に「睡眠圧力」という眠気の強弱のリズムも同時に働いているという著者の指摘。

睡眠圧力の波が最初にもっとも強くなって眠くなるのは、起床時刻から6〜7時間後、つまり朝6時に起床したとしたら、12〜13時くらいの時間帯となるわけです。以後はそこから下がりはじめ、次に眠気が強くなるのは深夜の1〜2時くらい。24時間のうちに眠気のピークが2回あり、そのひとつが昼すぎにあたるということです。

そういう意味では、昼間に眠くなるのは当然の反応。しかし眠気がピークに達している時間帯は、脳のパフォーマンスも大きく低下するようです。ましてや寝不足だった場合は、もともと眠くなりやすい状態にあるわけなので、余計に眠くなってしまうことでしょう。

もうひとつ、食事も眠くなる要因です。これは、食事をしたあとに上がる血糖値(食後血糖値)を下げるためにインスリンが分泌されるから。

人間は、インスリンが分泌されると自然と眠くなるのですが、とくに満腹状態のあとはインスリンが大量に分泌されるので強い眠気に襲われます。そして、血糖値が上がったままだと生活習慣病につながる可能性が高まるため、睡眠とは別の意味でも注意が必要です。

昼食は炭水化物(糖質)を控えめにして、タンパク質や野菜などの食物繊維を意識して食べるとそれほど強い眠気に襲われません。(153ページより)

なお朝食は、メラトニンの材料となる栄養素であるトリプトファンや、GABAを多く含む食材を摂取するとよいそう。具体的には大豆製品、牛乳、バナナ、ヨーグルトなどを積極的に取り入れるべきだといいます。

昼食は、朝食の4〜5時間後にとるのがベスト。朝に食べたものが消化されており、身体に負担もかかりません。食事の間隔は、長すぎても短すぎてもよくないのです。

午後のエネルギッシュな活動のためにも、昼食では「身体の材料となる栄養素」であるタンパク質をしっかり摂取したいところ。肉類などの高タンパク食材をとるのにもっとも適しているのは、実は昼食です。(154〜155ページより)

逆に昼食には適さないのが、鍋などの熱い汁物や、香辛料を大量に使った辛いもの。熱さや辛さでシャキッと頭が冴えそうにも思えますが、実はそうではないようです。

昼間に深部体温を過剰に上げると、その反動で以降の体内時計のリズムが狂い、眠気に襲われたり夜眠れなくなったりするおそれがあるというのです。

ぐっすり眠るためには、食事の内容やタイミングも意識する必要がありそうです。(152ページより)

しっかり休める習慣を身につければ、疲れが取れて前向きな気持ちになれるはず。そして、そうした積み重ねによって(大げさではなく)「人生が変わる」、そんな睡眠の可能性を著者は信じているのだそう。

そうした思いを軸に書かれた本書を参考にすれば、よりよい睡眠を自分のものにできるかもしれません。

Source: アスコム

メディアジーン lifehacker
2023年2月15日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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