『チャットGPTvs.人類』
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「バスに乗り遅れるな」という狂騒曲の中で一番冷静な本
[レビュアー] 碓井広義(メディア文化評論家)
気がつけば、チャットGPTが大ブームだ。米国のベンチャー企業が開発した対話型ソフトで、大量の学習データを読み込み出力する大規模言語モデルだという。そう聞いても、よく分からないが。
チャットGPTは、質問すれば物知り博士のように答えてくれるし、文書作成が大の得意。コンピュータのプログラム作業も可能だ。膨大な情報量と人間のような自然な対応が特徴という、実に便利な道具らしい。
昨年11月に公開され、ユーザー数は2ヶ月で1億人を突破。日本のユーザー数は世界のトップ3に入る。関連本をチェックすると数百冊が並んでいた。「こんなに役立つ」というハウツー系が多く、「バスに乗り遅れるな」の雰囲気がある。選んだのは、平和博『チャットGPTvs.人類』。理由はシンプルで、この本が一番冷静だったからだ。
著者によれば、チャットGPTは回答内容の真偽について判断は行っていない。「もっともらしい」回答を出力しているだけだ。しかも事実とは異なる作り話の回答をする「幻覚」と呼ばれる現象も起こす。今のところ、人間のような「価値判断」は出来ないのだ。
さらに「5大リスク」を挙げている。プライバシーの侵害、企業秘密の漏洩、雇用の喪失、サイバー犯罪、そして制御不能な進化への懸念だ。著者は「AIにできることと人間にしかできないことの整理」の重要性を説く。喧伝される「万能さ」の背後に隠れた、知性の「空洞」が問題だ。