素朴な質問→ガツンとくる答え メディアが詳報しないモヤモヤ解消に

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素朴な質問→ガツンとくる答え メディアが詳報しないモヤモヤ解消に

[レビュアー] 立川談四楼(落語家)

 こういうことだろうと見当をつけるも、メディアが詳報しないので得心のいかないことがある。マスコミには広告主がいて、追及を手控えることもあろう。ではNHKはどうか。経営委員が誰に任命され、会長がどう決まるかを考えれば、これまたあまり期待はできない。

 本書の第1章は〈戦争の時代に突入した〉であるが、その始まりが、「アメリカの公共事業としてのウクライナ戦争」なのだ。聞き手は白馬社編集部。マスコミは揃って「ロシアの領土的野心がウクライナの侵略戦争を引き起こした」という論調ですが、ウクライナ側にも瑕疵があるのではないでしょうか―この読者を代表する問いに、著者がズバッと答えるのだが、この部分に「えっ、そうだったの?」、あるいは「やはりそうだったか」と、読者は驚いたり納得したりする作りです。質問、答えと続くのです。

 本誌読者の興味は多岐にわたるでしょうが、私の興味は第3章の〈カルトの支配は終わらない〉で、中でもガツンときたのが「選挙で政治が変わるという妄想を捨てられるか」です。

 挑戦的です。捨てられるかとくるのですから。読み進み、ふむふむそうか。心してかからねばなどと思うわけです。「この国には民主制を担保する健全な対立(アゴニズム)がない」などもドキリとさせ、認め難いが認めざるを得ないとなるのです。

 第5章の〈無知による奴隷化というリアル〉では「昆虫食が語る世界のディストピア化」に、つい最近大きな話題になっただけに注目しました。発端が2013年だったことに驚かされます。どう広まり、ついには投資案件として脚光を浴びるに至るかが語られます。ほら、例の「コオロギが食えるか」というやつです。

 モヤモヤすることを、若者はモヤると言います。私がモヤっていたものは、本書においていくつか納得に至りましたが、あなたのモヤりはいくつ解消できるでしょうか。

新潮社 週刊新潮
2023年8月3日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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