路上観察にもいろいろある。著者のターゲットは、もの言わぬ看板。かつて誰かが何かの目的で立てたのに、経年劣化で文字や図が消えていたり、空っぽの枠だけ取り残されていたり。そんな看板を「無言板」と呼び、作り人知らずのアートとして鑑賞する。
無意味、無用の看板が持つ、ある種の豊かさやわびさびを味わう趣向。こんなに多くの「無言板」が街に放置されたまま、気づく人も少ない現実にも驚かされる。景気の低迷などでそれどころではないのか、高度情報化で街角の看板のニーズが低下しているのか…。背景も気になる。(ちくま文庫・990円)
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2023年8月13日 掲載
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