『校閲至極』
- 著者
- 毎日新聞校閲センター [著]
- 出版社
- 毎日新聞出版
- ジャンル
- 語学/日本語
- ISBN
- 9784620327877
- 発売日
- 2023/08/28
- 価格
- 1,760円(税込)
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「喝を入れる」はなぜアウト? 新聞校閲の四方山話が楽しい
[レビュアー] 立川談四楼(落語家)
「校閲、何それ?」という時代が長かった。2016年秋、日本テレビ系のドラマ『校閲ガール』がそれを打ち破った。実際、私も各社各紙の校閲に支えられている。本欄にももちろんあり、何度助けられたか。私が赤っ恥をかかずに済んでいるのも校閲のおかげなのだ。感謝。
本書は『サンデー毎日』の連載が書籍化されたものだ。毎日新聞校閲センターは東京と大阪に分かれ、その精鋭による74編のコラム集で、さすがはプロ、その文章に隙はない。
内容は多分野にわたるも普遍性があり、例えば「高校野球の記事、三つの『アウト』」はどうだろう。つまり気をつけたい言葉で、「檄を飛ばす」「喝を入れる」「吹奏学部」です。毎日新聞用語集では、檄を飛ばすは「激励」の意味で使うのは望ましくないとして「奮起を促す」などと書き換えるとか。
喝を入れるは「活を入れる」が正しい表記で「選手を鼓舞した」などにするという。「吹奏学部」、アハハ、私これ何度もやらかしました。「吹奏楽部」ですよね。でもなぜか吹奏学部になってしまうんです。ここを読んで、アッ、私もと思った方は多いでしょう。
「季下に冠を?正さなければ」はどうでしょう。正解は「李下に冠を正さず」ですよね。さて落語です。『風呂敷』の中では「直に冠をかぶらず」となります。「直に冠をかぶると痛えだろ。だから冠をかぶる時にはガーゼかなんかを敷いて、それからかぶれという戒めなんだ」
「おでんに靴をはかず」は、もっと飛んでいます。「おでんを食うとき靴をはいててごらん。屋台を引いてるおでん屋のオヤジはどう思う? あ、この人はカネを払わずに駆け出したら早えだろうなって心配するじゃねえか。だからおでんを食うときには下駄とか雪駄にしろということだ」もちろん「瓜田に履を納れず」が元ですが、さあ校閲諸氏はこれをどう直すでしょうか。