『リハビリメイク 生きるための技』
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顔じゃないよ心だよ、なんてウソだ!
[レビュアー] 梯久美子(ノンフィクション作家)
書評子4人がテーマに沿った名著を紹介
今回のテーマは「化粧」です
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『リハビリメイク 生きるための技』の著者・かづきれいこ氏は、高校生のとき日記に「顔じゃないよ心だよ、なんてウソだ!」と書いた。
生まれつきの心臓の病気のため、冬になると極端に血流が悪くなり、顔が真っ赤にむくんだ。夏は男の子からラブレターがたくさん来るのに、顔が赤くなる冬は見向きもされない。中身は同じでも、周囲は顔で態度を変えるのだ。それでも大人たちは、顔より中身を磨けと建前ばかり言う。
30歳で心臓の手術をして赤い顔から解放されると、顔のトラブルで辛い思いをしている人のために、自然に見えるメイクの研究を始めた。やけどや手術痕、生まれつきのあざ、治療の副作用によるやつれやむくみなどをカバーする化粧法を開発し、リハビリメイクと名付ける。
それまでのカバーメイクとの違いは、患者の社会復帰を目的とするケア行為として、医療の中にメイクを位置づけたことだ。形成外科、精神科、内科、歯科などと連携して施術を行ってきた。
本書を読むと、医療現場にどのようにメイクが取り入れられているかがよくわかる。かづき氏は大学院で学び博士号を取得して、病院でメイクを指導。大学での講義も担当している。
この本の初版は2002年。何と20年以上も版を重ねている。傷のあるなしにかかわらず、自分の外観をどう受容するかという普遍的なテーマが根底にあり、内容は少しも古びていない。