『君が手にするはずだった黄金について』
書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます
『君が手にするはずだった黄金について』刊行記念対談・働きたくない僕らのサバイバル人生論
[文] 新潮社
「働きたくない……」
就活や残業…人生で一度はそう思ったことがあるのではないだろうか。
作家の小川哲さんと芸人のカズレーザーさんは、「働きたくない」という気持ちを突き詰めていった結果、現在の職業に辿り着いたという。
小川さんは2015年に作家としてデビュー。わずか7年で直木賞を受賞し、SFから歴史、ミステリ作品と様々なジャンルで高く評価される。カズレーザーさんは2012年に安藤なつさんと「メイプル超合金」を結成し、2015年にM-1グランプリ決勝進出で注目を集め、数多くの番組に出演している。
作家と芸人、まったく違う世界で独自の道を見出し、活躍している二人が「働きたくない」ために選んだ生き方とは?(前編・後編の前編)
(以下は、作家・小川哲さんが、自身と同姓同名の「僕」を主人公に、怪しげな人物たちと遭遇する連作短篇集『君が手にするはずだった黄金について』(新潮社)の刊行を記念した対談を一部抜粋・編集したものです)
***
小川 お久しぶりです。昨年、ラジオ「週刊! しゃべレーザー」(SBSラジオ)にお邪魔したとき以来ですね。
カズ 『地図と拳』(集英社)が山田風太郎賞を受賞した後にゲスト出演していただきました。『君のクイズ』(朝日新聞出版)も刊行されたばかりの頃でしたよね。どちらも拝読していましたが、内容も雰囲気も同じ著者による作品とは思えないくらいにかけ離れていて、小川さんのアンテナの広さにびっくりしました。
小川 ありがとうございます。
カズ 最新作『君が手にするはずだった黄金について』(以下『黄金』)もまた全然違うタイプの小説でした。全六篇、〈小川哲〉という小説家が主人公の連作短篇集。こういう作品が書けるとモテるんじゃないですか?
小川 え? どうしてそう思ったんですか?
カズ 〈小川〉に恋人がいるときのことが描かれた「プロローグ」「三月十日」を読んで、ですね。たとえばこうやってしゃべっていて、「昔付き合ってた彼女の話なんですけど……」って言われたら自慢話に聞こえちゃうじゃないですか。でも小川さんの文章はあまりウェットすぎず、ほどよくセクシーに映るというか、素敵な恋愛に感じました。
小川 意外な角度からの感想でした(笑)。
カズ 大概の人はモテない人間と付き合いたくないじゃないですか。モテたかったら、すでにモテてるように見せるのが一番なんでしょうね。そういう意味では、まるで本当のことのように恋愛を描ける作家さんは、モテるんじゃないですか?
小川 いや、現実ではモテないですよ。モテるかどうかって、結局どれだけ人と会うかが大きいと思うんですが、小説家は基本的に一人で書いている時間が長いですし、読者と会うこともめったにありませんから。
カズ 打率の問題なんですね。