『タロットの美術史〈1〉 愚者・奇術師』鏡リュウジ著

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愚者・奇術師

『愚者・奇術師』

著者
鏡 リュウジ [著]
出版社
創元社
ジャンル
芸術・生活/絵画・彫刻
ISBN
9784422701615
発売日
2024/01/25
価格
1,650円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

『タロットの美術史〈1〉 愚者・奇術師』鏡リュウジ著

[レビュアー] 東畑開人(臨床心理士)

 心はレントゲンには写らないけれど、絵にすることはできる。タロットカードがそれだ。たとえば、「恋人」のカードはあなたの恋する心を絵にしているし、「皇帝」のカードはあなたの支配したい心を絵にしている。

 全12巻の本シリーズ『タロットの美術史』は、心を絵にしてきた歴史を一望させてくれる。たとえば、この第1巻では「愚者」が扱われている。私たちの中の愚かな部分が、実は鳥のように自由であり、だからこそひどく孤独であり、そして実は賢くもある矛盾を、タロットカードの様々な図案たちが教えてくれる。

 楽しい本だ。心にいろいろな面があることを見せてくれる。同時に、不気味な本でもある。未来がわからない、そういう私たちの根源的な不安を生々しく描いた本であるからだ。しかし何より美しい本だ。心が絵になる。すると、そこに遊びが生まれ、意匠が凝らされる。これが素晴らしいのだ。(創元社、1650円)

読売新聞
2024年3月8日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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