『こいしいたべもの』
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『こいしいたべもの』森下典子著
[レビュアー] 産経新聞社
《一口食べたら甦(よみがえ)る、あの人の思い出》。昭和30年代生まれの著者が、幼少期から慣れ親しんだ味22品にまつわる体験、人、感慨などをたぐり寄せたエッセー集。
父が好きだった少し焦げ目のついた焼きビーフン、停電の夜、ロウソクの灯を囲み、家族で食べた缶詰、遅い青春時代を象徴する夜明けのペヤング(ソースやきそば)。さらに鳩サブレー、コロッケパン、芋きん、ホットケーキ…。
《母が野菜をスタスタと刻み、卵をカカカッと溶き…》などのシズル感や、昭和のどの家族にもあったようなやりとりが随所に。そこに浮かぶ「幸せ」が胸に迫る。(文春文庫・700円+税)