色で分類の「鳥図鑑」で触れる日本文化の奥義

レビュー

9
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日本の美しい色の鳥

『日本の美しい色の鳥』

著者
上田 恵介 [監修]/大橋 弘一 [著]
出版社
エクスナレッジ
ISBN
9784767822426
価格
3,024円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

日本文化の奥義に触れる色から分類する鳥図鑑

[レビュアー] 大竹昭子(作家)

 野鳥ファンに言うと怒られそうだが、鳥のなにがいいのか長いことわからなかった。それがあるとき、目の前を下りてきた雀の動きを目で追い、クチュクチュいう声を聴くうちに頬が緩んでくるのに気がついた。なんだかとても可愛い。

 そんな野鳥初心者の私の気持ちをもう一歩前に押し進めてくれたのが本書である。野鳥を習性ではなく、色をキーワードに紹介しているところが文系の私にはツボだった。美しい写真が、視覚的な力で野鳥の世界に橋をかけてくれたのだ。

 第一章「赤色を愉しむ鳥」のトップバッターは鶴のタンチョウ。白と黒の羽色の頭頂にのった丹(赤)が実にエレガントでオシャレである。ところが説明を読むと、赤いところは皮膚がむきだしになった部分という。つまりハゲ、だ。大切な頭部がそんなふうでしかも赤いとは、自然界の創り主は何を考えているのだろう……。

「日本の伝統色になった鳥」では鶸(ひわ)色の語源であるマヒワ、鳶(とび)色のトビなどが紹介されている。鶯色がウグイスから来ているのはわかるが、思い浮かぶ色はたぶん和菓子のうぐいす餅のような黄緑色ではないか。

 ところがこの色はメジロの羽色と取り違えている。ウグイスの本当の色は灰色みを帯びた緑褐色。つまり正しい鶯色はうぐいす餅の色よりずっと地味で渋い。

 カワセミ、コルリ、ヤマショウビンなど、「青色を愉しむ鳥」は青色好きの私にはたまらない。

 うっとりと眺め入るうちに、箪笥の奥に眠っている着物の彩りがよみがえってきた。鳥の体には複数の色や模様が入っているが、それが着物の柄を連想させたのだ。

 きっと先人たちは鳥を見て色の組合わせや柄を着想したのだろう。日本画でも鳥は重要なモチーフだし、日本文化の奥義に触れる存在であるのに遅ればせながら気付かされた。バードウォッチングしながら、心はいにしえに飛んで行く。

新潮社 週刊新潮
2017年3月23日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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