かっこいいおじいちゃんになりたい!~映画に学ぶおじいちゃんの魅力~

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かっこいいおじいちゃんになりたい!~映画に学ぶおじいちゃんの魅力~

[文] ナイトウミノワ(おじいちゃん評論家)

ナイトウミノワ
ナイトウミノワ

 このまま年を取るのが怖い!と思っている人、どうせ年だからと開き直り、諦めてしまっている人、いるのではないだろうか。
 でも、年を重ねれば重ねるほど深みが増して、魅力が出てくるという考え方もある。
 どうせ年を取るなら、皆から憧れられたり、人間的な深さを認められたりしたいものだろう。そこで、「いとしのおじいちゃん映画」(立東舎)の著者である、おじいちゃん評論家・ナイトウミノワ氏に、その秘訣を聞いてみた。

■男性はいつからおじいちゃんになる?

 世界には素敵なおじいちゃんがたくさんいます。おじいちゃんはかっこよくて、かわいくて、頑固で、そして、ちょっとだけめんどくさい。でも、私は映画に出てくるおじいちゃん俳優、何気なく観に行った映画で思いがけなく出逢った、名前もわからない端役のおじいちゃんに萌えるのです。

 いろいろな映画を観ていて、最初に「おじいちゃん」を意識したのは、ファット・ボーイ・スリムの『Weapon of Choice』というミュージックビデオに出ていたクリストファー・ウォーケンでした。当時、彼は50代後半。真顔で、華麗に踊りまくる姿に衝撃を受けたのです。その直後、『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』に出演しましたが、控えめながら強烈な印象を残し、頑固さこそが魅力的でした。
 そこから、あれ? おじいちゃん俳優って意外とたくさんいるな、魅力的な人が多いなと思うようになったのです。
 特に脇役のおじいちゃん俳優たちが気になり、そこから、「おじいちゃんってなんだろう」「人はいつからおじいちゃんになるんだろう」という疑問を持ちはじめました。

 ところで、「おじいちゃん」というと、どういうイメージがありますか?
 どちらかというと否定的に感じる方が多いのではないでしょうか。
 私は、痩せているおじいちゃん、太っているおじいちゃん、ハゲているおじいちゃん、白髪のおじいちゃんなど、いろいろなバリエーションのおじいちゃんに魅力を感じます。
 若い頃は「ハンサム」だった人が年を取って柔和になったり、頑固になったりという変化はありますが、素敵なおじいちゃんにはその人ならではの良さがあるのです。
 人は誰しも年を取ります。ということは、日々新しいおじいちゃんが生まれていることになるのです。だから、おじいちゃんは無限です。
 どうです? 年を取るのも悪くないなと思えてきませんか?

■かっこいいおじいちゃんになるために

 では、私が考える「おじいちゃん俳優の条件」をお話ししましょう。
 まず、「還暦を迎えていること」。日本では60歳で還暦ですが、アメリカでも60歳の誕生日をダイヤモンド記念日としてお祝いします。時として50代後半の俳優さんを入れる場合もありますが、区切りとして還暦を基準としています。
 条件の2番目は「老いに抵抗せず、受け入れていること」です。生きている限り、わたしたちは年を取ります。ある程度まではそれを食い止めることもできるでしょうが、当然あらがえない部分も出てきます。でも、顔のシワ、ほっぺのタレ具合、髪の毛の生え方など、ごまかすことなく受け入れている、まさにそこに魅力を感じるのです。
 そして、「シャキッとしていること」。目が見えづらくなったり、足腰が痛くなったりすることがあっても、カメラの前に立ち、ライトを当てられたとき、シャンと背筋を伸ばすかっこよさ。きちんと身なりを整え、とっておきの服を着て外の世界へ足を踏み出すとき、どこか自分に自信を持てる気がしませんか。年を重ね、キャリアを重ね、自分に求められていることを理解し、役割をきっちりと果たす、そういうおじいちゃんはかっこいいです。
 最後に、「性を感じさせすぎないこと」です。私はいわゆる枯れ専ではないので、おじいちゃんたちを恋愛対象としては見ていません。でも、ギラギラ張り切るわけでも、過去の栄光にすがるわけでもなく、男性としての魅力を秘めつつ、ふとしたしぐさにそれが現れるというような、意外性を含んだ色気はとても素敵だと思います。

 具体的には、人生をはちゃめちゃに楽しんでいるようでいて、しっかりとした主義主張を持つイアン・マッケラン。恐ろしいイメージがありながらもお茶目さを忘れないアンソニー・ホプキンス。豪快な演技の陰に寂しさが潜んでいるジャック・ニコルソン。また、知的な眼差しの中に、少しの不思議さがあるモーガン・フリーマン。端正な顔立ちにふさふさまつげ、抜群の演技力を持ち合わせたマイケル・ケインはとても上品さがあります。さらに、セクシーであり少し怖そうにも見えるテレンス・スタンプは背筋が伸びているし、楽しそうに踊り、見ためとは違い、コメディ好きのクリストファー・ウォーケンは引き出しの多さが魅力でしょう。まだまだ引退には早いと思えるショーン・コネリーは、実は還暦前の作品が多いのですが、ハゲてもセクシー。クリント・イーストウッドは、厳しそうな中にもかわいらしさが垣間見えますし、トミー・リー・ジョーンズは、キングオブ真面目といっても過言ではありません。そして、いつの間にか渋いおじいちゃんになっていたロバート・デ・ニーロや名実ともに伝説となったクリーストファー・リー。
 皆、演じる役柄によって、その良さが変わり、飽きることがありません。

■老いることを受け入れる

 では、私が今後に期待をしているルーキーおじいちゃん俳優を紹介します。
 まず、2018年に還暦を迎えるゲイリー・オールドマン。悪役をやることが多かったせいか、ギラギラしたイメージがありましたが、最近ではいい意味で毒気が抜け、演じる役柄も変わってきています。人生経験の豊富さがちょっとしたしぐさからにじみ出るような、渋いおじいちゃんになるでしょう。
 次に、2020年に還暦を迎えるコリン・ファースにも注目です。いい感じに白髪が入り、スーツとメガネが似合う英国紳士おじいちゃんになりそうです。
 そして、今年還暦を迎えるスティーヴ・ブシェミ。ぎょろりとした印象的な目と豊かな表情。俳優にしては珍しく歯並びの矯正をしていません。主役を演じることは少ないですが、おじいちゃんになったら、マフィアのボスなどが似合いそうです。

 これから「おじいちゃん」になっていく方へお勧めしたい作品は、クリント・イーストウッドの「グラン・トリノ」でしょう。頑固なおじいちゃんが隣人と仲良くなり、彼らを守るために正しさを貫き通します。本物の男とは何か。生と死とは何か。どうにもならない問題を抱えたとき、それを解決するベストな方法とは何かなどを考えさせてくれるのです。
 そして、もう一つ、同じくクリント・イーストウッド出演で、おじいちゃんたちが宇宙に行くお話の「スペース・カウボーイ」。この作品にはいろいろなタイプのおじいちゃんが出てきて、まさにおじいちゃん祭りです。若者には負けられないと張り切ったり、達成できそうにないことをやってのけたりするカッコよさがあります。
 最後に、トミー・リー・ジョーンズが出演している「カンパニー・メン」。エリートサラリーマンが大企業からリストラされる物語で、彼はリストラに反対する副社長を演じています。職を失った人たちが不安やストレスを抱えながらも這い上がってくる様はもちろんですが、登場人物たちの立ち姿がとても印象的です。姿勢や服装、背景などからいろいろなものが透けてみえてきます。
 こういった作品を観ると、気持ちだけで突き進まず、体の自由がきかなくなることを受け入れつつ、流されながらも自分の芯の部分を大切にするというのもいいのではないかと思うのです。

 付け焼き刃の魅力では素敵なおじいちゃんにはなれません。当たり前ですが、おじいちゃんは生まれたときからおじいちゃんではないのです。好みの俳優さんがキャリアを積み、人生の重みを増してくる。それを見るのは楽しくもあり、幸せなことですよね。
 好青年からおじさまへ、おじさまからおじいちゃんへと華麗な転身を遂げていく俳優さんを見つけ、「こんな年の取り方をしたい」と目標にしてみてはいかがでしょうか。

立東舎
2017年8月27日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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