<東北の本棚>「日本の原風景」を活写

レビュー

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

岡本太郎の東北

『岡本太郎の東北』

著者
岡本 太郎 [著]/平野暁臣 [監修]
出版社
小学館クリエイティブ
ジャンル
芸術・生活/写真・工芸
ISBN
9784778036102
発売日
2017/06/23
価格
2,750円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

<東北の本棚>「日本の原風景」を活写

[レビュアー] 河北新報

 芸術家岡本太郎(1911~96年)は東北に魅了された。1957年2月から65年2月にかけて巡り、日本の原風景、日本の神秘を見いだしたのだ。本書は、透明でいきいきとした生活感に引き込まれてシャッターを切り続けた岡本のモノクロ写真約100点を収める。
 「本来の日本人であり、また人間としての生命を最も純粋に、逞(たくま)しくうち出しているわれわれの血統正しい祖先なのだ」。巻頭で東北をそう評する岡本。中央権力によって不当に押しつぶされてしまった日本人の魂をえぐり出し、由々しき問題としてぶつけていくことが自分自身の使命として東北と向き合った。
 日本文化の源流を求めた旅は57年2月、秋田県で始まった。角巻きの女性に魂を揺さぶられ、なまはげに「人間でありながら、そのまま人間を超えている」と引きつけられる。その年の6月には岩手県を訪ねる。中尊寺の宝物の中に「縄文文化の気配」を抱く。「人間-動物。どっちだかわからない。その凄(すご)み」を受けて活写した鹿踊りの写真は躍動感あふれる。
 62年7月と65年2月は青森県に足を運ぶ。恐山のイタコらの姿に「女の力を、東北ほど、強く、ナマに感じさせられるところはない」と知らされる。62年10月と年末年始は山形県に出向き、湯殿山の即身仏や羽黒山の松例祭を撮影。「民族固有の暗号」「繊細で根深い神秘」を感じた。
 本書をプロデュースした岡本太郎記念館の平野暁臣館長は「『岡本太郎の眼』を追体験する貴重なドキュメントであり、失われてしまった日本を生々しく伝える」と巻末に記す。東北の旅で原日本の確かなイメージをつかんだことが、岡本のその後の進路を決定づける契機になったという。
 エネルギッシュに被写体に迫る岡本の姿が目に浮かび、放つメッセージが息づく。
 小学館クリエイティブ0120(70)3761=2700円。

河北新報
2017年10月22日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク