一○五歳、死ねないのも困るのよ 篠田桃紅 著

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一〇五歳、死ねないのも困るのよ

『一〇五歳、死ねないのも困るのよ』

著者
篠田 桃紅 [著]
出版社
幻冬舎
ISBN
9784344031883
価格
1,188円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

一○五歳、死ねないのも困るのよ 篠田桃紅 著

[レビュアー] 青木奈緒(エッセイスト)

◆心眼で探る「奥の奥」

 今も第一線で制作をつづけていらっしゃる美術家、篠田桃紅さんは数えの御年一〇五歳。この年代の方は満年齢ではなく、数え年に実感をお持ちなのだ。背骨を圧迫骨折なさってからは歩行に杖(つえ)が必要となり、老いとともに身体はいささか不自由となった。記憶力や気力は衰えても、精神はますます成熟して、思いも一段と深まるという。目に見えるものにはこだわらなくなり、「表現されていない、奥の奥の奥」を、心眼をもって探ろうとなさっている。

 なんと見事な老いの境地だろう。重ねた歳(とし)に自負を持ち、人生につきものの悩みや苦しみ、妬(ねた)みといった感情からは解き放たれて、自分がどう自覚するかで幸福な一生は決まる、「風はみんなに同じように吹いている」と説く。

 こんな一◯五歳なら誰もがなりたいと願うだろう。だが、篠田さんは人の真似(まね)をするのは横着であり、あくまで自分がどう生きるかを手探りで追い求めている。こちらに同意を求めるのではなく、困っているときに読んだからといって、救いの手を差し伸べてくれるわけでもない。ただ、自分はこんな風(ふう)に思い、こんな風に日々送っていると、淡々とつづる。

 いつからでも決して遅いということはない。人生の大先輩から、いかに生きるべきかの指南書である。本来の自分にすっきりと立ち返る勇気が湧いてくる。

(幻冬舎・1188円)

<しのだ・とうこう> 1913年生まれ。美術家。著書『人生は一本の線』など。

◆もう1冊

 下重暁子著『もう人と同じ生き方をしなくていい』(海竜社)。過去の著作から集めた八十歳を超えた著者の人生観。

中日新聞 東京新聞
2017年12月3日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

中日新聞 東京新聞

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