<東北の本棚>羽生、荒川と共に歩む

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日本フィギュアスケート 金メダルへの挑戦

『日本フィギュアスケート 金メダルへの挑戦』

著者
城田 憲子 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784103514213
発売日
2018/01/18
価格
1,650円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

<東北の本棚>羽生、荒川と共に歩む

[レビュアー] 河北新報

 荒川静香(宮城・東北高-早大出)や羽生結弦(ANA、宮城・東北高出)ら五輪フィギュアスケートのメダリストを指導した著者が、栄光を手にするまでの歩みや共に歩んだ選手との悲喜こもごもを振り返った。
 日本スケート連盟が1992年に開いた児童向けの合宿で、著者は当時10歳の荒川と出会った。初めは格別目立った存在でなかったが、94年の国際大会で、荒川が3回転のコンビネーションジャンプに挑んだ姿が目に留まった。
 言われたことにすぐチャレンジする素直さ、高いハードルに果敢に向かう気持ちの強さ、実際にそれをこなせる身体的能力-の3点を荒川が当時既に備えていた、と素質を見抜いた。「この子はオリンピックチャンピオンになれるかもしれない、そうしたい」との思いを強くし、その後の支援を惜しまなかった。
 羽生との出会いも連盟主催の合宿だった。2004年、小学4年生だった羽生の姿に、音楽からイメージするものを全身で表現するのが好きな選手だと感じた。当時の羽生は転倒が多かったが、技術が成長し音楽的センスと結びつけば「かつてない総合的な実力を持ったスケーターに化ける可能性がある」と考えた。
 羽生の報道対応を一例に挙げ、「発言に至るまでの必要な思考の整理と心身の準備を自身に課すことができるところ」が、ここ一番の勝負強さにつながっているとみる。連覇を目指す平昌(ピョンチャン)冬季五輪に向け「彼が強い気持ちを抱いてリンクに立つこと、それだけを心の底から願っている」と思いをつづった。
 本田武史(郡山市出身、宮城・東北高出)や高橋大輔、安藤美姫、村主章枝ら近年活躍したスター選手にも触れている。
 著者は1946年東京都生まれ。94~2006年日本スケート連盟フィギュア強化部長。16年ANAスケート部監督。
 新潮社03(3266)5111=1620円。

河北新報
2018年2月11日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

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