仕事のなかの「小さな習慣」を続けられるようにする方法

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Habit Stacking 人生を大きく変える小さな行動習慣

『Habit Stacking 人生を大きく変える小さな行動習慣』

著者
S・J・スコット [著]/和田美樹 [訳]
出版社
日本実業出版社
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784534056405
発売日
2018/11/15
価格
1,650円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

仕事のなかの「小さな習慣」を続けられるようにする方法

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

目標の達成につながる「小さな行動」にフォーカスして毎日を過ごせば、すべてがもっと充実し、キャリアの方向性もはっきりするーー。

Habit Stacking 人生を大きく変える小さな行動習慣』(S・J・スコット著、和田美樹訳、日本実業出版社)の著者は、そう主張しています。

しかも、大きな労力や意志力は不要。本書で紹介されている「小さな習慣」も、ほとんどが「5分以内で実践できること」。なのに、ある程度繰り返せば、大きな複利効果が期待できるというのです。

ところで「小さな行動」とは、いったいどのようなものなのでしょうか? 著者によればそれは、たとえば「ヘルシーなドリンクをつくる」「大切な人に心のこもったメッセージを送る」「朝一番に取りかかる3つの最重要タスクを決める」などのシンプルな行動。

それらを毎日繰り返して習慣化すれば、いろいろなことがうまくいくようになるという考え方なのです。ただし、「毎日繰り返す」という点が重要なポイントであるようです。

なぜなら、それが成功の現実だから。「一夜のサクセスストーリー」のようなエピソードを耳にすることがありますが、実際に成功した人の話をよく聞いてみるとわかるのは、「成功はプロセス」だということ。

同じ日課を毎日繰り返し、コツコツ続けるがんばりが、長年を経て身を結ぶというケースが大半だというわけです。

いいかえれば成功は幸運でも出来事でもなく、懸命な努力と日々の行動の積み重ねの結果だということ。

そうした習慣はいくつでも取り入れることができ、以下の点を守れば実行できるのだといいます。

1. 自分にとって重要な「小さな行動」を見つける

2. 同じくらい重要な行動をセットにまとめる

3. 毎日決まった時間にそれらを実行する

4. トリガーを使って、自分にスタックの実行を促す

5. 面倒に感じないようひたすら簡単にする

(14ページより)

ポイントは、大事な情報をセットで行うこと。すなわち、習慣をまとめてスタッキングする(積み重ねる)わけです。「習慣スタッキング」がうまくいくのは、たくさんの新しいことを毎日の習慣にするストレスがないから。

簡単で効果的な習慣からスタートし、そのルーティンが「やらなければ気持ちが悪い」重要な日課として定着したら、徐々に増やしていけばいいということです。

それらをどう実践するかについて解説した本書のPart 5「『仕事』の小さな習慣」のなかから、いくつかをピックアップしてみたいと思います。

1日のスケジュールを決める

スケジュールが決まっていないと、大事なことをなにも達成できないまま1日が終わってしまうことになります。そのため、少なくともその日にやるべきタスクをリストアップし、優先的に取り組むものを決めることが大切。

まず最初にすべきは、その日のうちに完了させたいタスクをリストアップすること。とてもできそうにないような長いリストではなく、現実的な作業量にすることがポイントだそうです。

そして、各タスクの重要度が「①重要かつ緊急」「②重要だが緊急ではない」「③重要ではないが緊急」「④重要でも緊急でもない」のどれに当てはまるかを決めます。(80ページより)

最重要タスクを3つ特定する

1日のスケジュールを立てる方法として実行しやすいのが、まずは最重要タスク(MIT=Most Important Task)に専念するという方法。

それならたくさんのタスクを詰め込みすぎることもなく、やりきれなくて落ち込むような事態にもならないというわけです。

3つの最重要タスクを特定しておけば、優先順位の高いタスクにフォーカスすることが可能。

そうすれば、たとえ最重要タスクしかできなかったとしても、生産的な1日が送れたことになります。大切なのは、最重要タスクをやり終えるまでは、ほかのことには手をつけないようにすること。(81ページより)

目標を確認する

達成したい目標は、誰もが持っているもの。しかし、忙しい日常を送っているうちに、つい忘れてしまったりするものでもあります。

それを避けるためには、毎日目標を確認することが重要。そうすれば、「その目標に近づくために、その日やらなければならないタスク」を計画できるわけです。

なお目標は、1日、1週間、1カ月、四半期(3カ月)、1年単位で設定することが大切。四半期ごとに5つか7つの目標を設定しているという著者は、その方法を読者にも勧めています。

なぜなら四半期という期間は、大きなことを達成するのに十分な期間であると同時に、長期計画が変わった際には調整しやすい短さでもあるから。

バインダーや「Evernote」などのアプリを使って、見返しやすいところに記録・保存し、毎日一度か二度、5分かけてそれを確認すればOK。

なお確認する際にはひとつひとつの目標を音読し、その日に実行するタスクを検討するといいそうです。各タスクについて、「この行動が、目標達成にどうつながるだろう」と自問するということ。

その結果、もし明確に答えられないようなら、それはそもそもやらなくていいか、もしくは人に任せたほうがいいタスクだと言えるわけです。(82ページより)

難しいタスクを一番先にこなす

タスクリストを見ると、つい、すぐにできそうな簡単なものから手をつけたくなるものです。そして嫌気がさすような大きなタスクは、先延ばししてしまいがち。

しかし、難しいものから先に完了できれば、達成感を得ることができ、そしてやる気も湧いてくるでしょう。そればかりか、いちばん難しいタスクを終えたあとは、ほかのタスクがすべて簡単に感じられるものでもあります。

一流音楽家を調査したところ、ほかの人よりも多く練習しているわけではなく、周到に計画した練習をしていた、という研究結果があります。

最も難しいタスクに重点的に取り組み、練習時間をより生産的に使っていたのです。 タスクリストをよく見ると、最も難しいタスクこそ、最もメリットをもたらすものだとわかるはずです。(83ページより)

タスクリストをチェックして、「できることならずっと先延ばししたい」と感じるものがあったら、まずすべきは、そこにアンダーラインを引くこと。

そして、それについてあれこれ考える前に取り組むべき。それが終わるまでは、ほかのことに手をつけないようにすることが大切だそうです。(83ページより)

タスクを実行しやすいステップに分ける

プロジェクトの大きさに圧倒され、どこから手をつけたらいいのかわからなくなることがあります。著者によれば、それこそが先延ばしの原因

そこですべきは、スタックのなかの時間をあてて、段階ごとに細かい計画を立てること。そうすれば、どこから手をつければよいかがわかり、生産性を上げることができるからです。

ここで著者が提案しているのは、主要なタスクのひとつひとつを、実行しやすいステップに数分で分解すること。たとえば「ウェブサイトの記事を書く」というようなタスクがあったとしたら、次のように分けるわけです。

1. 内容が伝わるタイトルを書く

2. 質の高い情報源や優れた引用文をリサーチする

3. 小見出しや主要な論点をまとめる

4. 初稿を書く

5. 遂行して第二稿を仕上げる

6. 誤字脱字や文法をチェックし、第三稿を仕上げる

7. ウェブサイト用に書式を整える

8. 画像を探してサイズを調整する

9. 画像を挿入する

10. 記事を予約投稿する

(84ページより)

このようにタスクを小さな行動に分割すると、なにをすべきかが具体的にわかり、それを予定にどう組み入れればいいのかが判断しやすくなるということ。(84ページより)

ポモドーロ・テクニックを使って仕事をする

時間を有効に使って賢く仕事をしている人は、タイマーをかけて作業をすると気が散りにくくなることを心得ているのだといいます。

そこで著者は、もしも集中できずに困っているのなら、ぜひタイマーを使って短期間集中する方法を試してみてほしいと記しています。ちなみにこれは、「ポモドーロ・テクニック」と呼ばれる手法。

1980年代にチェスコ・シリロ氏によって考案され、起業家や生産性の専門家がよく実践している時間管理法です。

シリロ氏が着目したのは、「人が集中を持続できる時間は限られている」という事実。短時間に集中し、計画的に休憩するサイクルを繰り返したほうが、効率が上がることに気づいたわけです。

ポモドーロ(イタリア語でトマト)とは、よくあるトマトのキッチンタイマーにちなんだ名称。どこにでもあるキッチンタイマーを利用し、最も仕事の作業効率が上がる時間配分を研究したということです。

ポモドーロ・テクニックの手順

1. タスク(たとえば執筆)を選ぶ

2. タイマーを25分に設定する

3. 25分間わき目もふらずに作業をする

4. タイマーが鳴ったら席を立ち、5分間歩きまわる

5. また25分間作業に集中する

6. 作業サイクルを4回繰り返したら、15~30分の休憩を取る

(93ページより)

つまり毎日の120分間の執筆にポモドーロ・テクニックを導入する場合、5分休憩が4回入るので、執筆作業は正味100分ということになるわけです。

もっと続けて作業に打ち込んだほうが効率的だと思うかもしれませんが、持続することには限界があります。最初はやる気に満ちていても、そのうち集中力が落ちてきて、やがて、その仕事以外のことがしたくなってくるもの。

しかしポモドーロ・テクニックを使えば、気持ちをリフレッシュして集中力を充電できるため、気が散ったりだらけたりするのを防げます。

数分間の休憩時間が入るため、続けて作業するよりも作業時間は短くなりますが、総体的、最終的な仕事の質はよくなるということです。(92ページより)

このように、書かれている内容はシンプルでわかりやすいものばかり。

そして他にも「お金」「健康」「余暇」「片づけ」「人間関係」「癒やし」と、さまざまなことがらについての「小さな習慣」が紹介されているので、いろいろな習慣を取り入れることができるようになるはずです。ぜひ一度、手にとってみてください。

Photo: 印南敦史

メディアジーン lifehacker
2018年12月7日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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