<東北の本棚>少しずつ変え意欲的に
[レビュアー] 河北新報
ささいな失敗で落ち込む自分が嫌い。自信がない。そんな私はだめな人間だ-。自己肯定感が低い漫画家の著者が、自分を変えるための取り組みをエッセー漫画でつづった。
自分を好きになれない原因は、母子関係にあったと著者は考える。幼い頃から母の機嫌を損ねると何時間も理不尽に罵倒され、たたかれた。おしゃれや進路も厳しく制限されたという。
そこで「子どもの頃の私の声」に耳を傾け、当時やりたかったことを実現させた。なくすからと買ってもらえなかった色鉛筆セットを手に入れた。手伝ってもらえず習慣付かなかった歯磨きはカレンダーを手作りし、磨く度に色を塗った。逆上がりにも挑戦した。
できなかったことをかなえると、「大人の自分」も少しずつ意欲的になる。人の目を気にして手を出せなかった流行のファッションを楽しみ、思い切ってジャズライブのステージにも立つことができた。「心の中の小さな自分」を育て直せば、本来の自分を取り戻せると著者は教えてくれる。
一番いとしいはずの親から受けた心の傷は、子どもを長い間苦しめる。著者は「母を許せない自分を許せなかった」と話す。悩みながら自分なりの答えを模索する姿が心を打つ。
著者は1975年生まれ、尾花沢市出身。
幻冬舎03(5411)6222=1080円。