『最高の自分にリチャージする12章』
- 著者
- ジュリー・モンタギュー [著]/石田文子 [訳]
- 出版社
- 日本実業出版社
- ジャンル
- 社会科学/社会科学総記
- ISBN
- 9784534056726
- 発売日
- 2019/03/07
- 価格
- 1,815円(税込)
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食べても満たされない「エモーショナル・イーティング」の解消法は?
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
「自分のことを優先するための時間がとれない」「忙しすぎて自分自身のケアを怠っている」などの悩みは、自分を大切にする「セルフケア」によって解決できるーー
『心も体も生まれ変わる「セルフケア」プログラム 最高の自分にリチャージする12章』(ジュリー・モンタギュー 著、石田文子 訳、日本実業出版社)の著者は、そう主張しています。
ちょっとしたセルフケアは大きなチャンスにつながり、自分自身を救うことになるというのです。
ちなみにセルフケアとは、基本的に、自分が幸せになるために自分のケアをすること。
それが具体的に何かは人によって異なります。人生を肯定的にとらえる言葉を繰り返すポジティブ・アファメーションのような一見ささいなことから、ヨガや瞑想のレッスンに参加するといったことまで幅広く含まれます。
運動や食習慣による心身の健康管理ももちろんそのひとつですし、ひとりでじっくり考える時間をもったり、友だちや家庭と有意義に交流したりする時間をもつのもいいでしょう。(「はじめに 自分自身を知ろう」より)
いずれにせよ、そうしたセルフケアを優先する習慣を身につければ、体だけでなく心も穏やかになれるという考え方。
そこで本書では、12カ月のセルフケアプログラムを紹介しているのです。
研究によると、習慣を形成するには28日、習慣を断つにも同じく28日かかるといいます。私の12カ月セルフケア実践プログラムは、毎月ひとつずつ、新たなセルフケアの習慣を身につけることを目指します。
その過程で、いままで続けていた悪い習慣を断つこともできるでしょう。(「はじめに 自分自身を知ろう」より)
しかし、それは具体的にどのようなものなのでしょうか?
その点を知るために、「1カ月目:適切な食べ物をマンドフルに食べる」をチェックしてみることにしましょう。
「リアルフード(本物の食品)」を食べることの重要性について触れた項目です。
自分に適した食べ物を見つける
「体によい食べ物」について、「この食べ物はよくて、あの食べ物は悪い」というように単純に決めつけることは不可能。
いうまでもなく、私たち人間がそれぞれ違っていて、必要とするものも人によって違うからです。
たとえばアスリートなら、最高のプレイをするために特定のカロリーが必要でしょうし、ふたりの子どもがいるお母さんなら、体にエネルギーを与えて心のバランスを保つために食べる必要があるわけです。
なお著者によれば、体によい食べ物を選ぶコツは、前もって加工されてビニールのパッケージに入っていたり、レンジでチンして食べられたりするような食品を避けること。
「ジャンクフード」「ファストフード」など呼び方はいろいろですが、そういったものは体にも心にもよくないということです。
知っておくべきは、どのような食べ物が自分の体を十分に満足させ、元気にしてくれるかということ。
その可能性が高いのは、おそらく植物性で精製加工を最小限に抑えたホールフード(全体食品)。そういう食品には、人を満足させる栄養素がたっぷり入っているというのです。(28ページより)
エモーショナル・イーティングとは
エモーショナル・イーティングとは、一時的に気分をよくするために食べること。
「体が空腹だと告げているから食べる」こととは、まるで違う行為なのだそうです。
多くの人がストレスや退屈をまぎらすために、あるいは必要な友だちがいないときに、自分をなぐさめるため食べ物に頼っているというのです。
でも、そんなことをしていると気分はますます悪くなっていくものです。
食べることによって隠そうとしていた感情や、あわよくば取り除こうとしていた感情はそのまま残るうえに、別のネガティブな感情ー罪悪感ーが新たに生じるということ。
そこでセルフケア実践プログラムの1カ月目には、まず「心の飢え」と「体の飢え」の違いを理解することから始めるべきだといいます。
まず手始めにすべきは、次の質問に答えてみることだとか。
質問:あなたはエモーショナル・イーティングをしていますか?
・ ストレスがあるときに食欲が増しますか?
・ 食べることで、友だちがそばにいるようになぐさめられますか?
・ もう満腹だとわかっていても食べ続けることがよくありますか?
・ 自分へのごほうびとして食べ物を食べることがありますか?
・ 悲しみや不安といったネガティブな感情を抱いたときに食べることはありますか?
・ 自分の食習慣をコントロールするのは難しいと思いますか?
(31ページより)
これらの質問に答えることで、自分がエモーショナル・イーティングに陥りやすいかどうかがわかるというわけです。(29ページより)
エモーショナル・イーティングと戦う
感情に対処するためにどうしても食べたいという欲求がわき起こったら、食べるかわりに、次にあげることをどれかひとつやってみるといいそうです。
・ 食べ物に対する自分の衝動についてどう思うか、ノートに書く。
・ 強力かつユニークなマントラを作って唱える。たとえば、「私はこんな感情に負けて自分を破滅させたりしない。だから私はエモーショナル・イーティングをしない!」など。
・ 5分間、散歩をする。仕事中でも、オフィスの中を歩きまわったり、オフィスのある区画を1周したりする。
・ パートナーや、子ども、ペット、友人をハグするーーこれによって“愛情ホルモン”と呼ばれるオキシトシンが放出され、気分がよくなる。
・ 友人といっしょに写っている自分の写真を5分間ながめる。思わず笑みが浮かんでしまうような休暇中の写真や幸せな時期の写真がいちばん効果がある。
・ 自分自身について、好ましいと思う点を3つ書き出して冷蔵庫に貼る。
・ 困った状況や自分の感情にうまく対処できたときのことを思い出す。以前にできたのだから、またできるはず。
・ その人と話すと必ず気分がよくなるという人に電話をする。
・ 心が落ち着くような音楽をかけて紅茶を飲む。
・ この本を手に取り、この章をもう1度読む。
(37~38ページより)
また、なにかを口にするたび、しっかり味わうように意識的に努力することも大切。そうするだけで、食べることに関する考えが変わるというのです。
いずれにせよ、体に取り入れるものはすべて、なんらかの形で自分を豊かにするものでなければいけないわけです。(37ページより)
エモーショナルからマインドフルへ
エモーショナル・イーティングに陥るとき、私たちは自分の感情に正面から向き合う強さがないと感じていて、それを避けるために食べるのだと著者は指摘しています。
たしかに、自分の本当の感情を知るのは怖いもの。しかし自分の感情にただ“寄り添う”ことーー感情を抑えつけず、そのまま受け入れることーーを学べば、マインドフルネス(いましていることに意識を集中すること)も学べるもの。
そして、それは食習慣にも適用することができるのだそうです。
マインドフルに食べることは自分の食習慣を理解することに役立ちますし、感情を誘発するトリガー(困った状況や人、ものなど)と、その結果としての行為(食べるか食べないか)のあいだに5分間の猶予を置く癖をつけるのにも役立ちます。(39ページより)
事実、マインドフル・イーティングは、著者がエモーショナル・イーティングを克服する際に役立ったといいます。
マインドフルに食べることで、食べ物を愛で、香りや味、食感を楽しんで食べられるようになったというのです。
マインドフル・イーティングとは、口に入れるものに本当に注意を払うということ。
そうすることで、自分の食べるものに本当に気を配り、感謝することができるようになるといいます。(39ページより)
著者は、ロンドンの有名なヨガ&食物栄養インストラクター。本書の目的については、「読者が幸せで健康な自分自身になれるように、助言し、励まし、その気にさせること」だと記しています。
忙しいスケジュールにもフィットするような構成になっており、ヒントやアドバイスも豊富。
そのため本書を活用すれば、無理なくセルフケアを意識し、実践できるようになることでしょう。
Photo: 印南敦史
Source: 日本実業出版社