『自負と偏見』
- 著者
- ジェイン・オースティン [著]/小山 太一 [訳]
- 出版社
- 新潮社
- ジャンル
- 文学/外国文学小説
- ISBN
- 9784102131046
- 発売日
- 2014/06/27
- 価格
- 1,100円(税込)
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女性にとって最大の関心事は今も昔も変らない
[レビュアー] 川本三郎(評論家)
書評子4人がテーマに沿った名著を紹介
今回のテーマは「結婚」です
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どんなに世の中が変っても女性にとって人生最大の出来事が結婚であることは変らないのではないか。
ジェイン・オースティンの『自負と偏見』がいまだに愛読されているのはそのためだろう。
十九世紀初頭、イギリスの田舎に住む中産階級の五人姉妹の物語。
姉妹ものという点で、オールコットの『若草物語』、谷崎潤一郎の『細雪』と共通する。いずれも現代も女性に人気がある。
次女のエリザベスの結婚が物語の核になる。自負と偏見に揺れながらも最後は大金持の男性とめでたく結ばれる。いわば玉の輿。
二百年も前の話だが、現在読んでも驚くのは、彼女が、しっかりした自己を持っていて、自分を見下す貴族のレディと真正面から戦って結婚を勝ち取ること。
耐える女ではなく、主張する女であることはみごと。
結婚は無論、純粋な愛情だけでは成立しない。経済が重要になる。この相手と結婚して得か損か。エリザベスはそこもきちんと計算に入れている。たくましい。
オースティンの小説は、イギリスの美しい田園を舞台にしている。いわゆるカントリー・ハウス小説。
それを受け継いでいるのは間違いなくアガサ・クリスティ。オースティンにおける結婚がクリスティの場合は殺人に変る。
五人姉妹のなかで個人的に好きなのは地味な三女のメアリ。結婚なんて知らないよと常識に背を向けて本ばかり読んでいる。オースティンも独身だった。