世界最高レベルの写真家がノウハウを教えてくれる

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世界最高レベルの写真家がノウハウを教えてくれる

[レビュアー] 都築響一(編集者)

 オリンパスが映像事業をファンドに譲渡したり、創刊94年の「アサヒカメラ」が休刊したりと、年季の入ったカメラファンを悲しませるニュースが今年は続いた。

 カメラ業界の不振をスマホのせいにする論調は多いけれど、それは古書店の不振をブックオフのせいに、商店街の不振をイオンタウンのせいにしたりするのと同じで、全面的に正しいとは言えない。カメラが売れなくなったのは、カメラ業界がハイエンド・アマチュアばかりを向いた製品開発をしてきたからだ。ものすごく高価で、ものすごく多機能な新製品をひたすらすすめるカメラ雑誌と(言い方は悪いが)レッスンプロ、やたら難しい解説書……そういうすべてが「気楽に楽しく、きちんと写真を撮りたい」という一般人をカメラ屋から遠ざけてきた。

 本書は2012年に出版された『ナショナル ジオグラフィック プロの撮り方 完全マスター』のアップデート版。ナショジオという世界最高レベルの写真雑誌の写真家たちが、初心者に向けて「これだけは知っておいたほうがいいし、これだけ知ってればあとはどんどん撮ればいい」というノウハウを教えてくれる。

 どういう機材があればいいか、被写体とどう向き合い、写真にいちばん大事な3要素―「光」「色」「構図」―をどう捉えるか、そして撮影後はどうパソコンで後処理をするか。ほんとうに基本的で、でも僕も一応プロの写真家なので、これだけわかってれば大丈夫! と自信を持ってお勧めできる内容になっている。

 きれいな写真を撮るだけならもうスマホで充分だが、その上を目指したいひとは、ほどほどのデジタル一眼レフとしっかりした三脚、高性能のパソコンと現像ソフト、それにこの本があれば、あとは解説書を百冊読むよりも、カメラを持って外に飛び出したほうがいい。これはそういうレベルの教科書だ。

新潮社 週刊新潮
2020年9月17日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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