「電波少年」T部長の過激ロケが原因で引っ越し 矢部太郎が明かす「大家さんと僕」が生まれたきっかけ
対談・鼎談
『「大家さんと僕」と僕』
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大ヒット記念爆笑トークショー「土屋さんと僕」土屋敏男×矢部太郎・対談
[文] 新潮社
『土屋さんと僕』はハードボイルド?
矢部 最後にちょっとくらい、いい話をしてもいいですか? 『電波少年』が終わったとき、土屋さんが僕と相方の入江(慎也)君をステーキ屋さんに連れて行ってくれましたよね。その時に「今までの番組の企画で一回も逃げなかったのは、お前だけだ」って初めて褒められました。それは今でもよく覚えています。
土屋 『大家さんと僕』っていう漫画も、そこにずっと居続けることで描けたという意味では、同じだと思うよ。
矢部 それと、『電波少年』の経験があったから集中できるようになったとは思ってます。だから気象予報士の勉強もできたし、漫画もひとりで描けた。逆に、ひとつのことをやるのが好きになったということもありますが。僕、同時に2、3個やることがあると、テンパっちゃうんです。
土屋 もうみんな痛い目に遭ってますから、この業界にいれば。矢部を呼んでも面白くならない、話が転がらないよねって。矢部太郎って名前を知ってる人って結構いると思うんですけど、テレビタレントとしては本当に大成しなかったよねぇ。
矢部 過去形で語るのやめてくださいよ! これからも芸人としてやって行こうと思ってますから!
土屋 今でも緊張すると股間握るの?
矢部 握りますねぇ。でも漫画は握ってても大丈夫なんです、家で握りながら描けるんです!(会場失笑)
土屋 そんなこと言ったらね、買うのイヤになっちゃいますよね? 「握りながら描いたのか」って。
矢部 でも手は逆ですよ! 描いてる手と握ってる手は!
土屋 バカヤロウ!(笑) でもこれまで話を聞いて頂いた通り、描くネタは結構あるんですよ、『土屋さんと僕』っていう漫画はね。
矢部 読みたい、って声が果たしてありますかね……。あ、土屋さんも絵、描けるんじゃないですか?
土屋 じゃあ原案でいいよ。印税は70%くらいで。
矢部 取りすぎでしょ! でもお聞きの通り、土屋さんとはほっこりするエピソードが皆無です!
土屋 『大家さんと僕』とは対極のハードボイルドでね。2、3冊は描けるよな?
矢部 そんなに! でも、連載は「週刊新潮」じゃなくて、「BUBKA」とか「実話ナックルズ」とかになるんじゃないですか? それだったら可能性あるかもしれないですけど、媒体的に会社(吉本興業)からOKでるかなぁ……(会場爆笑)。
土屋 それ、めちゃくちゃ面白いじゃん。
矢部 いやいやいや! 今日は思っていた感じじゃない展開で……。おかしいなぁ、受賞おめでとうみたいな話になるんじゃないかと思ってたんですけど、ほぼそうならなかった……。でも、ありがとうございました(笑)。
土屋 矢部がどうしたら売れるのか、僕には想像もつかなかったんですけど、新潮社の酔狂な人たちのおかげでこんなことになって、やっぱりいろいろと諦めちゃいけないなということを改めて思った次第です。そして『土屋さんと僕』、乞うご期待!
矢部 期待しないで下さい!(笑)
(トークショーは2018年6月4日、紀伊國屋書店新宿本店にて開かれた/構成:成田全)
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土屋敏男(つちや・としお)
1956年生まれ。「電波少年」シリーズを手掛けるなど、日本テレビの名物プロデューサー。通称T部長。「電波少年」で矢部さんのことを見出す。共著に『誰もしらない 萩本欽一。We Love Television?』がある。
矢部太郎(やべ・たろう)
お笑い芸人。1997年に「カラテカ」を結成。芸人としてだけでなく、舞台やドラマ、映画で俳優としても活躍している。初めて描いた漫画『大家さんと僕』で第22回手塚治虫文化賞短編賞を受賞した。他の著書に『大家さんと僕 これから』があり、現在小説新潮で「ぼくのお父さん」を連載中。