『「乗り鉄」教授のとことん鉄道旅』
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<東北の本棚>四季折々の東北も堪能
[レビュアー] 河北新報
東京理科大理学部教授の著者の趣味は鉄道の旅。普段は「分子配列の制御と観察」を研究し、多忙な業務の合間を縫いながら1998年にJR、2011年に私鉄の全線完全乗車を果たした筋金入りの「乗り鉄」だ。ここまでくるともはやライフワークである。
そんな鉄道をこよなく愛する「てっちゃん先生」は、14年からNHK「ラジオ深夜便」のコーナー「旅の達人 全国鉄道紀行」に出演し、鉄道旅行の魅力や極意を語ってきた。本著は20年までの放送内容を季節ごとにまとめて紹介する。
てっちゃん先生は東北の路線の魅力に「風景」を挙げる。四季折々に山と川の織りなす美しさを堪能できるJR仙山線、田園風景が広がるJR左沢線、ウサギ駅長「もっちぃ」でおなじみの山形鉄道フラワー長井線。旅のお供にはもちろんうまい駅弁が必須だ。
東日本大震災で被害を受けた太平洋沿岸部の路線にも心を寄せる。JR石巻、仙石の各線、三陸鉄道リアス線を度々訪れ復興を肌で感じてきた。
時に乗り遅れ、カメラを座席に忘れることもあるが、それも一興。てっちゃん先生との紙上旅行は、気軽に遠出できる日を切望する私たちの心を慰めてくれるはずだ。(長)
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潮出版社03(3230)0741=1650円。