『極東ナチス人物列伝 日本・中国・「満洲国」に蠢いた異端のドイツ人たち』田嶋信雄・田野大輔編著、大木毅・工藤章・熊野直樹・清水雅大著
[レビュアー] 産経新聞社
戦前の日本とドイツは1933年のナチス政権成立以降、36年の日独防共協定、40年の三国同盟へと一直線に関係を深めたかのように見える。だが実のところナチス政権首脳は東アジアに定見がなく、極東政策は武器輸出絡みで親中派が多い軍部や外務省の伝統的エリートと、対ソ連の観点から日本に接近を図る新興勢力のナチス幹部らとの対立で常に揺れ動いていた。
防共協定成立の陰で暗躍した武器商人ハック、三国同盟締結で重要な役割を果たした駐日大使シュターマーなど、重大な外交関係が非職業外交官の独断専行で動いていったさまを描く、類書のない日独関係史。(作品社・2970円)