<東北の本棚>地域と伴走 思い明かす

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おもしろい地域には、おもしろいデザイナーがいる

『おもしろい地域には、おもしろいデザイナーがいる』

著者
新山 直広 [著、編集]/坂本 大祐 [著、編集]/中西 拓郎 [著]/小板橋 基希 [著]/吉田 勝信 [著]/吉野 敏充 [著]/佐藤 哲也 [著]/迫 一成 [著]/羽田 純 [著]/長谷川 和俊 [著]/土屋 誠 [著]/今尾 真也 [著]/稲波 伸行 [著]/堀内 康広 [著]/小林 新也 [著]/森脇 碌 [著]/安田 陽子 [著]/タケムラナオヤ [著]/古庄 悠泰 [著]/佐藤 かつあき [著]/福田 まや [著]
出版社
学芸出版社
ジャンル
芸術・生活/芸術総記
ISBN
9784761528102
発売日
2022/03/17
価格
2,640円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

<東北の本棚>地域と伴走 思い明かす

[レビュアー] 河北新報

 地方都市や農林漁村の生産者は良質な品を作ってもアピールが得意でない。架け橋となるデザイナーの役割は大きい。東北在住の4人を含む全国各地の若手デザイナー21人が筆を執り、地域と伴走するなりわいへの思いを明かす。執筆した新山直広さん(福井県鯖江市)と坂本大祐さん(奈良県東吉野村)が編集も担った。

 産品は伝統文化と結び付き、数や時期が限られる場合も多い。大量生産、大量消費が前提の大都市とは伝える手法も異なる。

 「地元に戻った時、ここで地元産のモノが買えないと知った。おいしい野菜をつくっても、一度東京を経由する流通なのだ」。こう記すのは、31歳で東京からUターンした新庄市の吉野敏充さん。市内で生産者と消費者をつなぐ「キトキトマルシェ」を始めて10年になる。地域内の経済循環が円滑化し、デザインを生かした新たな企画や商品、雇用創出にもつながっている。

 同じくUターン組の佐藤哲也さん(郡山市)は「デザインの本質は、クライアントの要望を叶(かな)えるだけではなく、それらを取り囲む暮らしや人の幸せにつながったかどうか」と考える。山形市の小板橋基希さんが依頼者と議論するのは品質だ。「モノがよければよいほど、デザインで伝えなければならないことがよりシンプル化する」

 デザインの語意は「意匠」「形状」だが、地方ではそれ以前の「設計」「計画」から関わることも。時にはカメラマン、ライター、ディレクターなども兼務する。山形県大江町の吉田勝信さんは「その果てにデザインの地域性と呼べるものができあがるのではないだろうか」と展望する。

 デザイナーが「おもしろい地域」で伸び伸び活動している。カラー写真の事例紹介も楽しい。元気をもらえる一冊だ。(志)
   ◇
 学芸出版社075(343)0811=2640円。

河北新報
2022年7月10日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

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