『高学歴親という病』
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子育ての三大リスク干渉・矛盾・溺愛
[レビュアー] 佐藤健太郎(サイエンスライター)
人が自分の子供を大学に入れようとする理由は、二つあるという。一つは自分が大学に行ったから、もう一つは自分が大学に行かなかったから、だそうだ。苦いジョークだが、特に自分が高学歴で、成功した人生だと自負している親ならば、子供にも同じ道を歩ませたくなるだろう。そのことが、子供にとってはえてして重圧になり、障害になる。
成田奈緒子『高学歴親という病』は、こうした高学歴の親たちが陥りやすい子育ての罠に、警鐘を鳴らす一冊。その三大リスクは、干渉・矛盾・溺愛だという。子供には失敗を経験させることが必要なのに、失敗する前につい助け舟を出してしまう。普通に育ってくれればいいと口で言いながら、受験には必死になる。子供を愛するがあまりわずかなトラブルでも学校にねじ込み、気づかぬうちにモンスターペアレンツに。ドキリとする親は多いのではないだろうか。自分の子を、同僚にマウントを取るための道具にしていないか、果たせなかった夢にリベンジするための材料にしていないか。少しでも心当たりのある方は、本書を手にとってみるとよいだろう。
子育ては、心配を信頼に変えてゆく旅であると著者は説く。まだまだ幼い(ように見える)我が子を信頼し、手綱を放すのは怖いことではあるが、早いうちにこれを経験せねば親も子もダメになる。子育てに正解はなく、著者の言うことが全てではないだろうが、いろいろと反省させられる一冊であった。