子供を「マウント取り」の道具にしていないか…高学歴の親に潜む子育てリスクとは

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高学歴親という病

『高学歴親という病』

著者
成田 奈緒子 [著]
出版社
講談社
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784065302125
発売日
2023/01/20
価格
990円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

子育ての三大リスク干渉・矛盾・溺愛

[レビュアー] 佐藤健太郎(サイエンスライター)

 人が自分の子供を大学に入れようとする理由は、二つあるという。一つは自分が大学に行ったから、もう一つは自分が大学に行かなかったから、だそうだ。苦いジョークだが、特に自分が高学歴で、成功した人生だと自負している親ならば、子供にも同じ道を歩ませたくなるだろう。そのことが、子供にとってはえてして重圧になり、障害になる。

 成田奈緒子『高学歴親という病』は、こうした高学歴の親たちが陥りやすい子育ての罠に、警鐘を鳴らす一冊。その三大リスクは、干渉・矛盾・溺愛だという。子供には失敗を経験させることが必要なのに、失敗する前につい助け舟を出してしまう。普通に育ってくれればいいと口で言いながら、受験には必死になる。子供を愛するがあまりわずかなトラブルでも学校にねじ込み、気づかぬうちにモンスターペアレンツに。ドキリとする親は多いのではないだろうか。自分の子を、同僚にマウントを取るための道具にしていないか、果たせなかった夢にリベンジするための材料にしていないか。少しでも心当たりのある方は、本書を手にとってみるとよいだろう。

 子育ては、心配を信頼に変えてゆく旅であると著者は説く。まだまだ幼い(ように見える)我が子を信頼し、手綱を放すのは怖いことではあるが、早いうちにこれを経験せねば親も子もダメになる。子育てに正解はなく、著者の言うことが全てではないだろうが、いろいろと反省させられる一冊であった。

新潮社 週刊新潮
2023年4月20日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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