『最期まで家で笑って生きたいあなたへ : なんとめでたいご臨終 2』
- 著者
- 小笠原, 文雄, 1948-
- 出版社
- 小学館
- ISBN
- 9784093888981
- 価格
- 1,540円(税込)
書籍情報:openBD
老後の不安が霧散する在宅医療という名の希望
[レビュアー] 立川談四楼(落語家)
2025年には国民の4人に1人が後期高齢者とか。私は少し遅れての仲間入りですが、どこでどんな風に死を迎えるのかは時々考えます。
まずは病院はヤだなあということです。自由がありません。体が動かなくとも気ままに振る舞いたいのです。酒もタバコも嗜むことですし、いつでもコーヒーというわけにもいきませんしね。
がんでの入院だとすると、私は痛みに耐える自信がありません。弱虫の痛がりですから、泣き叫んだらどうしようと考えるのです。みっともないですし。そんな私に本書は希望を与えました。在宅医療という名の希望です。
著者は僧侶になって65年、医師になって50年、在宅ホスピス医になって33年です。看取った患者は1800人、そのうち一人暮らしの患者が120人を超える、日本在宅ホスピス協会の会長という人なのです。
もう肩書きだけでも大安心、身を委ねるように読みました。医療用のモルヒネとの活字に目が留まります。痛みが和らぐのみならず、心が朗らかになると言うのです。それはモルヒネが幸せな気持ちにさせるエンドルフィンと化学構造が似ているからで、しかも安全とくれば、よし、基本これで行こうとなるのです。
家族の負担も考えますが、プロに任せろとあります。医師や看護師を始めとする人たちに委ね、時間があったら寄り添うだけ、一緒に世間話をしながら日向ぼっこでもしてくださいとあり、ホッとします。費用も入院より安いとあり、これまた胸を撫で下ろします。当然、介護保険等を上手く使うという前提ですが。
様々な例が紹介されますが、余命5日と言われた女性が在宅医療に変えて8年生きた話には感動しました。他にも語られる「いのち」の不思議は、在宅医療によって引き起こされるのです。馴染んだ景色や音がいかに大事かを本書は教えてくれます。私も家で笑って生きたいです。