『嫌な気持ちになったら、どうする?』
書籍情報:openBD
『嫌な気持ちになったら、どうする?』中村英代著(ちくまプリマー新書)
[レビュアー] 宮部みゆき(作家)
八月も後半になり、学校の夏休みも出口が近づいてきた。本書は、若い読者の皆さんのなかでも、この夏をめいっぱいエンジョイした! というタイプではなく、長期休みで一人になれて気が楽だったけれど、そんな自分はダメだ――と思ってしまうタイプの方にお勧めしたい。
サブタイトルにある「ネガティブ」とは、「怖い」「人の目が気になる」「何をしていても恥ずかしい」「怒りがおさまらない」「寂しくていてもたってもいられない」「消えてなくなってしまいたい」などの嫌な感情のことだ。著者はこれらの感情を見かけるたびに、「ネガティブが憑(つ)いてる」と思うのだという。
「祓(はら)っても祓ってもうじゃうじゃと湧き出てくる妖怪のような」ネガティブは若者が大好き。だから青春時代は、日常のなかで輝きと苦しみが同居することになる。ネガティブに対処する方法を説く類書はいくつもあるが、本書は特に、心の辛(つら)さを他者に相談することで発生する二次被害と、ネガティブをくぐり抜けた先の「相談上手、相談され上手になる」ことを考えているのが新鮮だ。