『デジタル生存競争』
- 著者
- ダグラス・ラシュコフ [著]/堺屋七左衛門 [訳]
- 出版社
- ボイジャー
- ジャンル
- 社会科学/社会
- ISBN
- 9784866893129
- 発売日
- 2023/06/30
- 価格
- 2,200円(税込)
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勝ち逃げ図る成功者たち
[レビュアー] 速水健朗(コラムニスト)
テクノロジーの勝者を宗教的に信奉する社会に対して警鐘を鳴らす一冊がある。『デジタル生存競争~誰が生き残るのか』だ。著者で メディア理論家のダグラス・ラシュコフ氏が、デジタル社会をよりよくするためにどうすべきかを呼び掛けている。
かつてコンピューター誌の編集を経験したライター・編集者である速水健朗氏が、同書を解説した。
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メディア研究者である著者は、講演の依頼を受けたという。
向かった先は砂漠の真ん中のリゾート施設、相手はたった5人の投資会社の幹部だった。
講演テーマは「テクノロジーの未来」だが、富裕層らが関心を寄せるテーマは別。安全な移住先、シェルターや警備部隊をつくるときに必要な知識についてのアドバイスを求められたという。そんな驚くべきエピソードから本書は始まる。
超富裕層やシリコンバレーの成功者たちは、社会問題の解決よりもそこから逃げ出すことにご執心。だが社会は、いまだ現代のテクノロジーが恩恵をもたらすという認識を変えずにいる。
本書によると、そのズレが生じた転機は20年前だという。
デジタル社会で起こる変化をいち早く察知したものが勝者となる社会が誕生。そのルールは起業家だけでなく、メディアや一般市民にまで広く共有されていくようになる。そして、テクノロジーの勝者を宗教的に信奉する社会になった。
IT後進国・日本ではまた見える光景は違うが、本書が見通す未来にはさして違いはないはず。堺屋七左衛門訳。