『成瀬は信じた道をいく』宮島未奈著

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成瀬は信じた道をいく

『成瀬は信じた道をいく』

著者
宮島 未奈 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784103549529
発売日
2024/01/24
価格
1,760円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

『成瀬は信じた道をいく』宮島未奈著

[レビュアー] 郷原佳以(仏文学者・東京大教授)

 『成瀬は天下を取りにいく』の成瀬が帰ってきた!

 何でも軽々こなしながらまるで鼻にかけず、予想のつかない思考で我が道を行く成瀬あかり。滋賀県大津市膳所駅近くに住み、西武大津店閉店と聞けば夏休みを捧(ささ)げて通いローカル番組中継に映り、ゼゼカラ(=膳所から)という漫才コンビを組んでM―1に出るほど地元愛が強い成瀬。

 いや、帰ってきたわけではない。少し成長して大学生になる成瀬は相変わらず飄々(ひょうひょう)として地元に暮らしている。私たちはその姿を目撃するのだが、成瀬が変わらないことを確認できるだけでなぜこんなに嬉(うれ)しいのか。「どうかしたか?」と成瀬に言われそうだ。

 本作で成瀬は前作より少しだけ有名人になっていて、小学生の「弟子」ができたり、びわ湖大津観光大使に選ばれて、ゼゼカラの相方、島崎以外のパートナーができたりしている。彼らはみな、空気を読まない成瀬の型破りな言動に巻き込まれ、自分を縛る枷(かせ)からいつのまにか自由になる。観光大使のパートナー、篠原かれんが心の中で呟(つぶや)く「うちの成瀬はすごいでしょ」に共感しない読者はいまい。(新潮社、1760円)

読売新聞
2024年3月8日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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