「雌豹になる方法を教えてください」 宇多丸とジェーン・スーが難問・珍問に答える

対談・鼎談

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ライムスター宇多丸の映画カウンセリング

『ライムスター宇多丸の映画カウンセリング』

著者
宇多丸 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784103505617
発売日
2016/11/30
価格
1,650円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

【『ライムスター宇多丸の映画カウンセリング』刊行記念対談】そうだ! 宇多さん、スーさんに聞いてみよう

 ***

 映画が好きなんですけど、自分が面白いと思った映画がことごとく批判されてて、自分の感性がおかしいのかなと。どう対処したらいいでしょうか。

 ***

宇多丸 批判してたのってまさか僕じゃないでしょうね(笑)。でもわかりますよ、その気持ちすごく。高橋ヨシキさんというすごく仲のいい映画ライターがいますけど、実は好みは全然一致してなくて。僕が大絶賛した映画を、結構ヨシキさんはケチョンケチョンにするわけ。しかも、マジ容赦なく、こっちの気持ちとか全く考えずに論理的に畳みかけてきて、だんだんこっちも元気なくなってくる(笑)。

 この方が心折れてくると言うのはよく分かる。ただ、最初に自分が観て面白いとか、何か感じたからには絶対何か理由があるわけです。そこから、こう感じたのは何故なんだろうとか、考えるようにしていくのはどうでしょう。

 さっきの「正解」の質問じゃないけど、映画の見方に正解なんてあるわけないので。ある一つの作品を一人の人が褒めることもけなすこともできるし、ある作品に対してどう光を当てるかによって、物の見方なんて全然変わってくるし。なので、今後私の言うことで気に入らないことがあるかもしれませんけど、それは俺の意見だから!(笑)

スー 宇多丸さんを権威にしないというのもリスナーの責務の一つだと思いますよ。「宇多丸がああ言った」とか「あいつが言ってんだから間違いない」とか言ってる人は、絶対何年後かに「あいつが言っているからだめなんだ」と簡単に寝返ったりしますから。

宇多丸 いいこと言いますねえ(笑)。『映画カウンセリング』の「まえがき」にも書いていますけど、僕としては、ラジオにしても、その映画を僕がどう捉えるか詳しく語ることで、こういう見方もあるという判断材料を提供しているわけで。別にそれ以外の考え方や思考の道筋だって幾らでもあるんですけどね。

スー 宇多丸さんはラジオで「映画時評」と言ってますけど、まず「評」という言葉を使う時点ですごいリスクと勇気が必要なことだと思います。それを背負った上で、今しゃべっていることは絶対ではないというのを常に同じ出力で出していくって、物すごいエネルギーが要ることで、それを一〇年ぐらい続けているって本当すごいなと思うんですよね。

宇多丸 いえいえ、とんでもないです! ということで……。

スー 褒められて終わると(笑)。

宇多丸 素直なのがいいんです!(笑)

 一月二十七日神楽坂la kaguにて

新潮社 波
2017年5月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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