<東北の本棚>備えに「民俗知」生かせ

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<東北の本棚>備えに「民俗知」生かせ

[レビュアー] 河北新報

 地震や津波、水害、火山噴火など太古の時代から日本で起きた代表的な災害事例を、古文書や遺跡発掘データを基にひもとき、地域の防災・減災の取り組みやそれぞれの時代における復興の在り方を検証した。文化庁などが2016年「復興の歴史を掘る」を主題に東京で開催した講演会を基にまとめた。
 仙台市教委文化財課の斎野裕彦専門員は仙台平野における複数の遺跡発掘調査の結果から、貞観地震(869年)の津波の遡上(そじょう)距離が1.5~2キロだったとする説を紹介。「(遡上距離は)東日本大震災の4キロより短かっただろう」とする見解を示す。
 平安時代の歴史書「日本三代実録」に、当時の朝廷が貞観地震の約3カ月後に被災地を検見する使者を派遣し、国府・多賀城の瓦のふき替えや陸奥国分寺七重塔を修理したなどとする記録がある。行政府の健全性を示し、仏教により国を治める朝廷の基本的な考え方が復興に反映されたと指摘する。
 元興寺文化財研究所(奈良市)の狭川真一副所長は各地に建立された津波にまつわる主な石碑の特徴を解説した。三重県熊野市にある津波供養碑は1854年の大地震による津波の規模などと併せ「大地震の時は津波が来ると思ってまず平地に出て、揺れが収まってから高い所へ逃げる」との趣旨の一文が刻んである。
 災害の記録は、行事や記念碑といった形の「民俗知」として地域社会で培われる。
 明治三陸地震(1896年)の後、犠牲者の法要を機に何千もの人が供養に集まったことなど近隣住民の支援に対する感謝の思いを記した宮城県南三陸町歌津の津波記念碑などを例示し、「古い碑を現代の災害対策に生かすにはどうすべきかを考える時期に来ている」と説く。
 全8章。古墳時代の火山災害や弥生時代の水害、江戸時代の大地震などにも言及している。
 朝日新聞出版03(5541)8791=1620円。

河北新報
2017年10月29日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

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