<東北の本棚>昭和の遊びや生活記録
[レビュアー] 河北新報
「わらしだ」は秋田弁で「子どもたち」。昭和30年代の秋田の暮らしを、子どもの目線で紹介したイラストエッセー集だ。秋田県五城目町出身の著者が、自身の記憶をもとに遊びや農作業、学校行事などをほのぼのとしたタッチで描いた。
自然を相手に遊ぶ子どもたちの創意工夫やバイタリティーは尽きることがない。高台に隠れ家を作って来るはずもない敵を見張ったり、田んぼに積もった雪を踏み固めて迷路を作ったりした。腹がすくとわなを仕掛け、スズメやウサギを捕まえて食べた。
働き手としての子どもたちにも着目する。農村部で暮らす人にとって米作りは家族総出の仕事だ。中でも稲穂を狙ってやって来るスズメを追い払う「すずめぼい」は、子どもが担った。放課後、あぜに作った見張り小屋でおやつを食べながら、ブリキの一斗缶をたたいて威嚇したという。
テレビゲームやネットに囲まれて育った世代にとって、約60年前の子どもの姿は新鮮に映るだろう。著者は「昭和の暮らしの記録誌として目を通してほしい」とつづる。
著者は1948年生まれのイラストレーター。「広報ごじょうめ」に96年から続く連載をまとめた。
秋田文化出版018(864)3322=2160円。