ヒット連続「動物ネタ」本 背景に工夫とビジョン〈ベストセラー街道をゆく!〉

レビュー

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わけあって絶滅しました。

『わけあって絶滅しました。』

著者
今泉忠明 [監修]/丸山貴史 [著]/サトウマサノリ [著]
出版社
ダイヤモンド社
ジャンル
自然科学/生物学
ISBN
9784478104200
発売日
2018/07/20
価格
1,080円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

ヒットが連なる背景に細かな工夫と明確なビジョン

[レビュアー] 倉本さおり(書評家、ライター)

 いまやどこの書店でも売り場の一角を占めている動物ネタの本。その端緒となった『ざんねんないきもの事典』(高橋書店)はシリーズ累計270万部を売り上げ、2016年の発売ながら一昨年に続き昨年度のベストセラーランキングにも名を連ねている。同じ編集者が担当した『わけあって絶滅しました。―世界一おもしろい絶滅したいきもの図鑑』(今泉忠明監修、サトウマサノリ、ウエタケヨーコ絵)も発売から半年足らずで10刷41万部と絶好調だ。とはいえ「柳の下にいつも泥鰌はいない」。ヒットが連なる背景には細かな工夫と明確なビジョンが存在する。

『ざんねんないきもの事典』がターゲットにしたのは「小学4年生の男子」。さらに「学校の成績はよくないけれど好きなものには熱中するタイプ」といったふうに、かなり具体的に読者像を想定したのだという。「そういう子供たちは、上から目線に敏感な代わりに、大人が“ガチ”でやっていることなら積極的に理解して面白がってくれるんです」(担当編集者)。一生懸命なのに思わずツッコまずにはいられない、愛すべき生き物たちを敢えて“ざんねん”と表した理由はここにある。

 今回の『わけあって絶滅しました。』では、なんと絶滅した生き物たちが自ら語る一人称文体(!)を二カ月かけて模索し採用したという。「朝ドラで後年の主人公が自分の現役時代を語るナレーションみたいなイメージです(笑)。“絶滅”という現象のインパクトをただ悲劇的に強調するのではなく、それ以前のイケイケで生きていた時代の生き物たちの姿を知ってもらいたかったので……」(同)。狙い通り、本書を読んだ子供たちが他の動物本や、より詳細な図鑑へと自発的に手を伸ばすケースも多い。

 動物たちを擬人化して語らせることに対する批判も少なからずある。「けれど彼らが“生きていた”という事実を知らなければ、そもそも考える機会が損なわれてしまう。まずは興味を耕す一助になれれば、と」(同)。二匹目のドジョウとは、あくまで最初の一匹から育まれていくものなのだ。

新潮社 週刊新潮
2019年1月17日迎春増大号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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