学びの友となる教科書を目指して――『社会保障法』刊行によせて
家族/研究会としての編集会議
渡邊 ところで、こういう概説書や教科書で「共著者全員が」女性だけというのは珍しくないですか?
――初めてだと思います。
渡邊 そうですよね。大体、男性が入りますよね。
――社会保障法学会の構成メンバー自体、女性がけっこう多いと思います。ただ、どの法律分野でも、40歳ぐらいの世代から女性が増えてきていると思います。
中野 それはそうですね。
渡邊 それでも、女性だけで並ぶのって珍しいだろうなと内心思っていたんです。
嵩 確かに。
――女性の先生方だけの教科書を担当するのは初めてなので感慨深いものがあります。
嵩 時代は変わってきた。
笠木 新しい時代ですね。
中野 労働法も女性の先生は多いですけれどね。
渡邊 多くなったけれど、まだまだということでしょうか。
中野 世の中の男女のバランスを考えたら、ここが女性だけでつくっているというのがむしろ偏っているのかな?
女性ばかりで楽しいとは思っていますけど。個人的には自分は長女なので、お姉さまたちに囲まれてとても幸せ。
笠木 家族のような雰囲気ですね。
――この本ができるまでにいろいろドラマがありましたよね。皆さん、私生活でもいろいろなステージを経験されました。
中野 始めたときには岩村先生と編集の一村さんを含めても独身半分、既婚者半分だったのに、気が付けば、私以外のみんなが次々と結婚していき、次々と子供を産み……。
笠木 嵩さんは、お子さん2人とも執筆中に出産されたんですよね。
中野 嵩さんは2人産んで、絹子さんと映里ちゃんも産んで。
笠木 一村さんを含めたら合計6人が誕生したことになるんですね。
中野 子どもは次々と順調に生まれるのに、本がいつまでも生まれないと言ったら、何をうまいこと言っているんですかと怒られたこともあった。嵩さんが産休・育休の間は仙台に集合しました。
笠木 楽しかったです。
中野 北海道で合宿をしたときには、これが最後の打ち合わせだからということで北海道に行ったのに。それからさらに時間がかかり……。
渡邊 あれは2年前でしたね、確か。
嵩 「これが最後、最後」というのが何度も来ましたね。
渡邊 編集担当者の穏やかな顔が変わっていくみたいな。
嵩 もうお顔を直視できなくなっていく(笑)。
――これで会合が終わってしまうと思うと残念な気持ちもあります。
嵩 すごくいい勉強の機会になって。
中野 なんだろう。本当に血を吐く思いで書いていたんですけど、今、みんなばらばらで仕事をしているので、それが毎回、岩村先生も交えて集まって。
嵩 研究会みたいだったよね。
中野 本当に研究会ですよね。最近の私生活のことから法律のことまでいろいろな話ができて、それは本当にすごく楽しかったです。特に私は、名古屋には社会保障法の研究者が少ないので、名古屋で判例研究会があっても、中京大学の柴田洋二郎先生が来なければ社会保障法の議論ができないので。
嵩 東北もそうです。
中野 なので、こうやって集まることができてよかったです。関西社会保障法研究会にも参加させていただいていますけど、名古屋にいるとなかなか社会保障法の話ができないので。皆さんと集まって話をするというのは、刺激をもらうという意味でもいい時間でした。
嵩 こういうテーマもあるんだなとかね。最高裁の最近の判例はこういうふうに読むんだなとか。
渡邊 疑問に思っていることを素直に話せる場というのかな。
中野 昔は岩村先生がいろいろな研究プロジェクトを企画し、我々と共同研究を組んでくださっていたじゃないですか。でも、先生もお忙しくなって、そういう機会も無くなって、その代わりにこの場があったなと。
嵩 大変だったけど、会合が終わっちゃうと、これから先のフォローアップはどうしたらいいんだろうかという感じです。