リクエスト・アンソロジーが、また出ます 大崎梢

レビュー

8
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宮内悠介リクエスト! 博奕のアンソロジー

『宮内悠介リクエスト! 博奕のアンソロジー』

著者
宮内悠介 [著]/冲方 丁 [著]/法月綸太郎 [著]/山田正紀 [著]/梓崎優 [著]/星野智幸 [著]/桜庭 一樹 [著]/軒上泊 [著]/藤井太洋 [著]/日高トモキチ [著]
出版社
光文社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784334912581
発売日
2019/01/23
価格
1,728円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

森見登美彦リクエスト! 美女と竹林のアンソロジー

『森見登美彦リクエスト! 美女と竹林のアンソロジー』

著者
森見登美彦 [著]/有栖川有栖 [著]/京極夏彦 [著]/恩田陸 [著]/佐藤 哲也 [著]/北野勇作 [著]/飴村行 [著]/矢部嵩 [著]/伊坂幸太郎 [著]/阿川せんり [著]
出版社
光文社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784334912598
発売日
2019/01/23
価格
1,728円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

リクエスト・アンソロジーが、また出ます

[レビュアー] 大崎梢(作家)

 リクエスト・アンソロジー、またやるんですよ。そう担当編集者から告げられて、「うはは」と変な笑い声をあげてしまいました。

 今を去ることだいたい八年前、同じ編集者から、アンソロジーをやりませんかと声をかけられ、てっきり寄稿する側だと思い、それにしてもあまり自信がないので生返事をしたところ、詳細を聞いてびっくり。自分でテーマを決め、参加してもらう作家さんを考え、その方に寄稿をお願いして、一冊の本にまとめるという役割付きの依頼だったのです。

 実年齢はさておき、当時の私はデビューしてまだ三、四年の若輩者。大変おこがましい話です。とんでもないと固辞したのですが、「たとえば本屋さんとか」とテーマを提案され、それはぜひとも読んでみたい。つい、うなずいてしまいました。

 同時にふたつのテーマが進行し、ひとつは近藤史恵(こんどうふみえ)さんの「ペット」。もうひとつが坂木司(さかきつかさ)さんの「和菓子」。私の「本屋さん」と合わせて計三冊に、それぞれ十作品、硬いものから軟らかいものまで、明るいのも暗いのも泣けるのもぎょっとするのも収録されました。執筆参加者は、まとめ役の個性が出る形となり、アンソロジーとしての面白さを押し広げたのではないかと思っています。

 好企画であることは当時、他社の編集者たちに「そういう手があったのか」と口惜しがらせたことからして間違いなく、もっと続けるべきだと大いに盛り上がりました。誰がまとめ役になるのか。どんなテーマが掲げられるのか。想像するのも楽しい。外野にまわるとただもう、純粋にわくわく。

 心待ちにしていたところ、ついに第二弾スタートとの知らせを受けたのでした。

 今回のまとめ役のひとりは宮内悠介(みやうちゆうすけ)さん。テーマは「博奕(ばくち)」。思いもよらないカードをすっと切られた気分。金品その他を賭けての勝負事に馴染みはなく、博奕縛りで十作品とはいったい何があるのだろうと思っていたら、デザートの種類が大問題? 占いが当たるかどうか? 江戸無血開城? 予想の斜め上を軽々と飛び越えてくれて、やっと出てきたルーレットや相撲にも一筋縄ではいかない企みが。そこからさらに風変わりな賭け事やおかしな試みが続き、碁打ちたちの攻防戦でお開きに。

 勝つか負けるか、丁か半か。結果がはっきりわかる一瞬に、何かしらを賭ける人々の潔さと人間くささには、自ずと引き込まれます。肩に力が入るし、ラストの余韻に放心もするし。物語の面白さが凝縮された、なんとも贅沢な十作品です。

 もうひとりのまとめ役は森見登美彦(もりみとみひこ)さん。テーマは「美女と竹林」。いやこれ、森見さんの著書名ではありませんか。もっと他に、京都とか狸とかペンギンとか、あるような気がするのですが。せめて美女、あるいは竹林という単体ならばともかく。

 縛りがふたつもあるのに、よくぞお引き受けになりました、森見さん以外の九人の執筆者。さすが勇者だけあって、突飛な発想(褒めてます)では本家に引けを取らず。十作品すべてに雄壮な竹林が登場し、上野のパンダも仙台の七夕も巻きこまれ、妖しげな暗がりに主人公その他は惑わされ、なんとか振り切って脱出を試みるも、美女が現れ足をすくわれる……。

 思うに、こういった難敵を、生まれながらに背負わされているのが人間と言えるのかもしれません。翻弄される酩酊感さえいつしか心地よく、ただならぬものに飲みこまれていく快感を、存分に味わわせてくれる力作揃いです。

「博奕」はその名の通り、タイトルからして博奕を打ち、涼しい顔で勝ち札を握っている心憎い一冊で、「美女と竹林」はさわさわと葉擦れの音を響かせながら、艶然と微笑む美女を仕掛ける油断ならない一冊で、どちらもこの企画でしかありえないテーマと顔ぶれです。どうぞ心ゆくまでご賞味を。

 ここまでお読みくださった方ならば、おそらく思っていらっしゃるでしょう。

 第三弾はいつ? まとめ役は誰? テーマは何?

 待ちましょう。そして開始の報に接した際は、「うはは」と笑おうではないですか。

光文社 小説宝石
2019年2月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

光文社

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